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Book Guide



 

■仕事術
将来のために着実に今日の1歩を
ちょいデキ!
●青野慶久著
●文藝春秋 2007年9月
●767円(税込み) 4-16-660591-7

 ワタミの代表取締役・CEOの渡邉美樹氏が記した『夢に日付を!』という有名な本がある。本書の著書となる青野慶久氏はこの本を読み、渡邉氏の夢に向かってひた走る姿や情熱に「すごい」と驚嘆した。そのすごさは青野氏からすると、少年マンガで有名な一撃必殺の北斗神拳のように思えたという。
  青野氏にいわせると、本書は「北斗神拳」ではなく、「太極拳」だそうだ。空想の世界で繰り広げられるまれな人間にしか体得できない究極の奥義ではなく、現実の世界で普通の人間が日常的に実践できる小技集だというのである。夢に向かってまずは一歩足を出す。または夢に近づくために今日もう一歩着実に歩みを進めるためにある。北斗神拳を究めた超人のような気迫に満ちた歩き方は誰にもできるものではない。公園で毎朝行う太極拳のように少しコツをわきまえてゆったりと進むような、普通の人でも十分可能な歩き方を提案している。
  そんな肩の力を抜いた歩き方は青野氏の人生や姿勢をよく表しているようだ。それが分かるように本書は冒頭の2章が著者である青野氏の半生の物語となっている。大企業に入社し、新人ながら社員のパソコンやネットワーク環境を1人で整備したときの苦悩、宿題や自由研究など計画的にコツコツと進めるのが苦手で自分なりの勉強法を編み出そうとする姿などが生々しい。
  大人や上司にとって青野氏はセオリー通りに行動せず、困った存在だったかもしれない。例えば中学で青野氏は1日半ページの漢字練習を嫌い、1日1個の漢字を確実に覚えるために3回書くのみという戦略を編み出した。だが先生にダメな見本としてクラスの前でしかられてしまう。さすがに筆記の訓練を簡略化するのは賢明ではなかったかもしれないが、これが青野氏の行動力を象徴しているかのようだ。
  創意工夫する発想力があり、同時に失敗に直面する可能性も高いが、そこから多くを学ぶ。そんな青野氏の経験と率直な言葉には「もう一歩」「ちょっとデキる」人間になるためのエッセンスが詰まっている。(ライター・加山恵美)

手帳を使いこなせば定時に仕事が終わる
定時で上がる! 手帳術――1日の仕事が半日で終わる!
●松本幸夫著
●すばる舎 2007年10月
●1470円(税込み) 4-88399-667-0

 「ああ、今日も仕事が定時に終わらない」と嘆きながら残業する人は多いのではないだろうか。かくいう筆者も仕事相手に「加速装置が欲しい」なんて冗談をいったら、相手も「私も欲しいです」と返してきた。冗談ではあるが、半分、いやかなり本気である。夜な夜な積み上がった仕事の課題に途方に暮れているビジネスパーソンのなんと多いことか。
  とはいえ、余裕がありすぎるのも考えものだ。仕事で成果を上げていけば、次第に任せられる仕事は増えてくる。そしていつも限界と向き合うことになる。仕事の量が多いのは、おそらく事実である。
  しかし著者は「でも、そんなに忙しいのは、本当に「仕事量」だけの問題なのでしょうか?」と問題提起する。
  仕事の効率が上がらない原因について、著者は「時間に関する意識が“薄い”のです」と厳しく指摘する。特に長期にわたる仕事や大プロジェクトだと、大まかに時間を考えてしまい、これが連日残業や休日出勤の原因となるそうだ。
  ただし時間の意識を明確にすれば劇的に効率は上がると著者はいう。「効率よく仕事を進める時間配分で働けば、今より確実に仕事のスピードは上がります。結果として残業時間が減り、仕事は今よりずっとラクになるのです」
  そのためには手帳をうまく“使いこなす”のが大事だという。手帳に予定を書き込むだけではダメで、1日に10回は手帳を開くくらいでないと使いこなしているとはいえないという。そして定時に仕事が終わるようなスケジュールを組むことが大事だ。本書には手帳を使いこなすためのテクニックが細かく記されている。本書を読んだうえで来年の手帳を選んでみてはどうか。(ライター・加山恵美)

「何が問題か」を認識する前に、解答に飛びついていないか?
ライト、ついてますか―問題発見の人間学
●ドナルド・C・ゴース、G・M・ワインバーグ著、木村泉訳
●共立出版 1987年10月
●2100円(税込み) 4-320-02368-4

 私たちは学校で、宿題や試験など、数多くの問題に取り組んできた。宿題の問題を解くときには、授業の内容の範囲から出題されているという手掛かりがあった。試験の問題を解くときにも、出題者の立場で問題を読み、出題者の期待する答えを出していたのではないかと思う。
  こうした経験を積み重ねてきた結果、社会に出てからも、何が問題かをきちんと認識する前に、解答に飛びつく癖を持ったままなのではないだろうか。例えばスキルを習得したり、プログラミングの技術を身に付けたりすることで、問題を把握しないうちからいろいろなものを解決できる気になっていないだろうか。
  この本では、問題を解決する前に、そもそも問題とは何なのかを考えるさまざまなエピソードが紹介されている。「問題発見の人間学」という副題のとおりだ。
  同じ人が読んでも、本から受ける印象は、その時々の状況によって変わってくるだろう。問題の当事者、解決者、意思決定者など、どの視点で読むかによっても異なると思われる。随所に隠れているぴんとくるエピソード、はっと考えさせられる言葉は、あらゆる場面で応用できるものになっている。これらが現状を見直すヒントになるかもしれない。近年システム開発において重要視されている、要件定義に取り組むITエンジニアにとっても、考え方を変えるきっかけになるだろう。
  それぞれのエピソードはユーモアたっぷりに書かれているので、特に深い動機を持たずに軽い気持ちで読んでも楽しめる。初版の発行は1987年と新しくはないが、それぞれの立場、それぞれの視点で何度も繰り返して味わうことができる本だ。興味がわいたら、一度手に取ってみてはいかがだろうか。
富士通ラーニングメディア講師・大坪祥子

「あなた」にしかできない仕事をしよう
デジタル・ワークスタイル―小さなことから革命を起こす仕事術
●徳力基彦著
●二見書房 2007年4月
●1575円(税込み) 978-4-576-07066-7

 ここ数年、ライフハックというキーワードが取りざたされている。仕事を効率的にこなして作業時間を減らすためのコツのことで、インターネット時代の仕事術として若手エンジニアの注目を集めている。
  ライフハックを利用して時間をつくり、そこからさらに新たなアイデアや価値を生み出すための方法を教えてくれるのが本書だ。著者は自らの経験から「あなたが今日やった仕事は、『あなた』がやる必要のある仕事だろうか」「その仕事をコンピュータに奪われるのは時間の問題だ」と読者に警告しながら、日々こなす作業の中で何を見直すべきか分かりやすくアドバイスしている。日々忙しさに追われている人へ、ぜひお薦めしたい1冊である。
  内容は2つのパートに分かれ、段階的にアクションを起こせるようになっている。Part1ではルーチンワークにかかる時間を半減させるための方法を紹介している。例えば、ビジネスパーソンが毎日「4時間以上」かかっているというメール処理時間の改善策。やることは「要返信」「保留」「アーカイブ」の3つのフォルダを作成し、受信フォルダのメールを移動させるだけである。「アクションが必要かどうか」で分けるのがポイントだ。筆者も実際にやってみたが、仕掛かり中や未対応のメールがハッキリ分かり、確実に処理できるようになった。とても単純なことだが、自分が何をしなければいけないのかを思い出すというストレスをなくすことで、作業はより素早く確実になるのだと感じた。
  Part2では、浮いた時間を使ってアイデアを生み出す情報収集・分析・発信の方法を具体的なツールとともに紹介している。例えばユーザーの興味の傾向を知るには、あるキーワードが検索された回数を調べることのできる「Google Trends」や、そのキーワードに言及しているブログ記事を検索し、ブログ内のキーワード数をグラフ化できる「Yahoo!ブログ検索」が便利だ。商品企画の参考にしたり、プレゼンテーションの説得力を増したりとさまざまな場で活用することができる。
  本書を読み終わると、本のタイトルの「革命」の意味が見えてくる。これは仕事が早くこなせるようになるということではない。生まれた時間を利用して、価値ある仕事ができるようになることなのだ。自分の仕事のやり方に特に問題はないと信じている人も、本書を通して一度見直してみてはいかがだろうか。
富士通ラーニングメディア講師・黒澤朋子

電子メールマナーのヒント集
仕事で差がつくできるメール術
●神垣あゆみ著
●青春出版社 2007年2月
●767円(税込み) 4-41304-167-4

 電子メールはすっかり普及している。かしこまった書簡と違い、効率や手軽さの方が優先されがちではあるが、ビジネスで使うなら最低限のマナーに配慮が必要だ。だがいざ電子メールのビジネスマナーを学ぼうとしても、意外といい手掛かりがないのが実情ではないだろうか。
  本書は著者が日刊で発行しているメールマガジン「仕事美人のメール作法」をもとに再編集したものだ。電子メールと同じように横書きで、見開きで1つの項目となるように細かくまとめられているので気軽に読める。パラパラと目を通すだけでも「そうか、こうすればいいのか」と気付くことがあるはずだ。
  本文では「ひと目で理解してもらえる送信者(差出人)名とは」「読まれるメールのポイントは“具体的な件名”にあった」など実用的な内容から、「意外に間違えている「ご返事」と「お返事」のワナ」など日本語そのものの解説も含まれている。
  例えばメーラーの送信者欄についていえば、多くの人がメールアドレスのまま、またはその一部となっている。これを適切な形に変えるだけで相手が受信ボックスを見たときの印象が変わり、ひいてはビジネス面で好影響を与えることができるだろう。
  こうした「ちょっとしたヒント」の積み重ねがセンスアップやマナー向上につながるのだろう。マナーというものは短期集中的に学ぶよりは、日々少しずつ覚えていくのがいいのかもしれない。特に電子メールは技術や環境がいまだに発展しているので推奨事項が変化している場合もある。本書を通じて自らの電子メールのマナーを見直してみるのもいいだろう。(ライター・加山恵美)

いまからでも試してみたい、効率的な仕事術
エンジニアのための時間管理術
●Thomas A. Limoncelli著、クイープ訳
●オライリー・ジャパン 2006年10月
●2300円+税 4-87311-307-5

 最近、「ライフハック」や「GTD(Getting Things Done)」といった効率的に仕事を行うための方法に注目が集まっている。ITエンジニアの中には仕事が忙しく、自分の時間が取れない人もいるという話も聞く。それだけに、ITエンジニアにとって効率的な仕事術が必要とされているのではないだろうか。
  本書にはこうした効率的に仕事をするための方法とノウハウが収められている。本書は主にシステム管理者やネットワーク管理者を対象に書かれている。著者はこれらの職種の特徴として作業の割り込みが多いことと、同時進行のプロジェクトが多いことを挙げる。しかし、こうした特徴はシステム管理者やネットワーク管理者だけに限らない。資料作成に集中しているときに話し掛けられて作業が中断してしまうことや、いくつかの仕事を同時に進行させたりすることは、どんな職種でもよくあることだ。
  本書は「エンジニアのための」と銘打たれている。しかし、作業のルーチン化や1日ごとのタスクリストの管理、タイムマネジメント情報の一元化など本書で紹介されている仕事術のエッセンスは、多くのビジネスパーソンにとって有効だろう。
  「習うより慣れろ」と著者はいう。本書は読み終えた後に「ちょっと試してみようかな」という気にさせる魔力を秘めている。「集中して仕事ができる環境を構築したい」「効率的に仕事をして自分の勉強の時間に充てたい」と考えている人にお薦めの1冊だ。(@IT自分戦略研究所 千葉大輔)

意外と日本人向きな「一丁あがり」の仕事術
ストレスフリーの仕事術――仕事と人生をコントロールする52の法則
●デビッド・アレン著、田口元監訳
●二見書房 2006年5月
●1500円+税 4-576-06073-2

 本書はいかに効率よく仕事を片付けていくかを指南する自己啓発書だ。いまや仕事が高度化・複雑化して、どこが終わりなのか分かりにくい。「100個部品を正確に組み立てたら終わり」ならノルマ達成は明確だが、そう単純ではない。積み上がった課題にうまく見切りをつけてさばいていかないとストレスはたまり、効率も落ちてしまう。
  業務の効率化を目的とした自己啓発の書はこれまでにも多数出版されている。どれも実践する個人に向き・不向きがある。また当事者の価値観や周囲の状況にも効果は左右される。では本書はどうだろう。最初に海外の翻訳書であることが目に付いた。海外では画期的かもしれないが、日本の企業文化に効果的だろうかと疑問がわく。
  すると意外にも著者は空手の経験があり、武道のトレーニングの「水のように澄んだ心」のイメージが背景にあるそうだ。これは禅にも通じる無我の境地というような、雑念を払い周囲の変化を精細に感じ取れるような状態を指すのではなかろうか。瞬間的に的確な判断を下し、柔軟かつ最小限の労力で相手を討ち取る武道の達人のような。武道ではなくても、冷静に状況分析ができるようになれば仕事も効率よく片付けられるはずだ。
  卓越した武道家の境地が根底にあるならば、日本人にだってやってやれないことはないだろう。むしろ空手を経験した欧米人よりも、趣旨を理解すればより高い効果を上げられるかもしれない。そう考えると輸入の自己啓発書ではあるが、日本人でも効果があるような気がする。一気に読むよりは1日1項目ずつじっくりとかみしめて毎日の仕事に生かすのがいいだろう。(ライター・加山恵美)

人間を中心に仕事を考えよう
SEの教科書――成功するSEの考え方、仕事の進め方
深沢隆司著
技術評論社(技評SE新書) 2005年11月
840円+税 4-7741-2652-7

 システムエンジニア(SE)、またはそれに限らずコンピュータ関係の仕事をしていると技術と格闘する時間が多い。そのためか、機械と仕事をしているような気になってしまう。だが違う。人間が仕事をする相手はやはり人間なのだ。それに気付かされる1冊だ。
  「SEの仕事は「人」が9割」、そう著者はいう。システムエンジニアは技術を介して多くの人間と接点を持つ。プログラマ、営業、上司、取引先の担当、エンドユーザーなどなど。それぞれシステムに対する率直な意見をシステムエンジニアにぶつけてくる。システムエンジニアはそれらをうまく調整していかなくてはならない。それが仕事だ。
  よくシステムエンジニアの資質にコミュニケーション能力が問われるが、その必要性を理解する手掛かりにもなるだろう。システム構築の仕事をしていると構築するシステムの技術面に目がいきがちだ。だがせっかく最新の技術を駆使しても空振りに終わることもある。成否は依頼する側の要望をどれだけくみ取れるか、それを実現するかにある。失敗の原因はコミュニケーション不足にあると著者は指摘する。
  本書ではSEの仕事をあらためて解説し、コミュニケーションからマネジメントまで成功に必要なことをかみ砕くように丁寧に説いている。また会議からシステム構築のあらゆる段階における仕事術を事細かく具体的に解説している。どんな準備をするべきか、どんな道具を使うべきかなど、著者の20年にわたる経験則が凝縮している。心構えから実践まで幅広く参考になることだろう。(ライター・加山恵美)

楽しく、悲しく、エンジニアの生態を考える
SEのフシギな生態――失敗談から学ぶ成功のための30ヶ条
●きたみりゅうじ著
●幻冬舎 2005年12月
●600円(税込み) 4-3444-0725-3

 人気を博した書籍が文庫本になった。自らもSE経験者で幾多の辛酸をなめた著者が、生々しくSEの生態を暴く。目を背けたくなるほど悲惨なものも多いが、コミカルなマンガで描かれているため、毒が少なく気軽に読み進めることができる。またマンガなのでシステム開発で疲労困憊(こんぱい)し、「小難しい本なんて読みたくない」と思うときでも読める。むしろ疲れて落ち込んでいるときにこれを読めば「おれはまだマシだ」と慰めになるかもしれない。逆につらいことを考えてしまうタイプならお勧めできない。
  SE経験者なら「あるある」、と苦笑いしてしまうような話ばかりだ。客先の担当者が異動になり設計工程が振り出しに戻ってしまうとか、徹夜作業でようやく仕上げたプログラムを、ふとしたミスで上書きしてしまったとか、そうしたことでSEは奈落の底へと突き落とされる。よくよく考えてみると信じがたいほどひどい話だが、よくあることなのだろう。私もSEを経験しているので身につまされる。
  しかし本書の目的は同情ではなく、つらい過去を振り返り赤面することでもない。こうした失敗談から教訓を得ることだ。何がまずかったのか。再発を防ぐにはどうすべきか。プログラムでも1度失敗したコードは2度とそのまま利用してはならないはずだ。必ず原因を特定して修正するのが鉄則だ。SEとしての働き方もしかり。目前のシステムに気を取られて忘れてしまいがちだが、仕事をするうえで基本的な要素が詰まっている。ふとしたことでうっかり足をすくわれないように、技術力だけではなく、人間力も兼え備えたSEになろう。(ライター・加山恵美)

SEが素晴らしいと思える瞬間はいつですか?
それでも素晴らしいSEの世界〜あなたの迷いを晴らす80のメッセージ〜
●岩脇一喜著
●日経BP社 2005年9月
●1680円(税込み) 4-8222-2146-6

 多くの「悩めるITエンジニア」に向けた厳しくも温かい80のメッセージ。日々の業務に忙殺されていると、ふと「ああSEなんてならなきゃよかった」「もうやめちゃおうかなぁ」なんて思ってしまう瞬間があるだろう。そんなときに、ぜひとも手に取って開いていただきたい1冊だ。
  IT業界やSEという世間一般とは微妙にズレた特殊な職業の日常が、皮肉とユーモアたっぷりに楽しく分かりやすく描かれているのが魅力。例えば、忙しい忙しいといいつつ「仮眠」ばかりするSEやIT知識をひけらかす嫌味な「コンサルタント」、起こるべくして起こる「突貫工事」などなど、多くのSEが日々の業務をこなす中で必ずや一度は出合うであろう出来事がスパッと切り取られていて、読んでいてとても小気味いい。そのうえ、読み終えると著者から小声で「ガンバレ!」とささやかれているような感覚を味わえる。「なんとなく力がわいてくるなぁ」というのが率直な感想。多くの人も自らの内面にうっせきした悩みや心にかかったモヤモヤの霧がすっと晴れていくのを感じられるのではないだろうか。
  80のテーマは、どれも見開き2ページで完結する構成でとても読みやすい。各テーマの冒頭には掛け合い漫才のような小話も掲載されていて楽しい。1話完結型なので、どこから読み進めても構わないが、第1章から順番に読んでいくと、ラストの第4章「真のプロフェッショナルを目指して」でぐっと気分が盛り上がる。そこでやる気になるのだ。疲れ気味の方にお薦めの1冊だ。(ライター・下玉利尚明)

残業をしないための技術を身に付ける
残業しない技術
●梅森浩一著
●扶桑社 2004年7月
●1050円税込み) 4-594-04750-5

 誰でもあまり残業はしたくない。しかし下手に早く仕事を切り上げると、後で仕事を増やすことにもなりかねない。残業を減らすコツは「サクッ!」と仕事を片付けることにあると著者は説く。習得すべきは手抜きではない手際の良さだ。
  例えば手際の良さを身に付けるには「80%でもやりすぎ!」とある。自分では80%の仕上がりと思えるものでも、そこまでやれば十分な場合もある。自己満足のために過剰な努力をすることはない、評価されない仕事をやっても意味がないと著者は指摘する。
  こうした考えは完ぺきに仕事をこなさないと気が済まない堅気なエンジニアには抵抗感があるかもしれないが、無駄な残業を減らすためには必要な意識改革の1つだ。もしかしたら日本人全体にもいえるかもしれない。
  思えば日本では電車の運行から自動改札までほぼ完ぺきに稼働していないと問題視されるが、海外では完ぺきではないということがままある。これを完ぺきに近づけようとすると数%増では済まされないほどの労力が要る。多少不完全でも致命的でなければ無視するという「割り切り」ができると過剰な労働時間を減らすことにつながるということだ。
  本書はテーマを21本にまとめ、簡潔に読めるようになっている。パラパラと読むもよし、最初から最後まで通して読んでもそう大して時間はかからない。手に取りやすいサイズと値段もまた魅力的だ。うっかりすると忘れがちになる教訓が列挙されている。手近なところに置いてたまに読み返してみてもいいだろう。(ライター・加山恵美)


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