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コラム:自分戦略を考えるヒント(25)
変化に強いキャリアを築くコツ

堀内浩二
2005/12/1

 2005年も師走になりました。今回は過去の「自分戦略を考えるヒント」を振り返りながら、「変化に強いキャリアを築くコツ」をまとめてみたいと思います。年末年始にあれこれと考える際のお供になれば。

変化に強いキャリアとは?

 最初に「変化」について定義しておきましょう。変化といってもいろいろあります。

 1つ目は大きなうねりのような長期的な変化。今年か来年をピークとして日本の人口が減っていくのも変化ですし、景気の変動も、技術の移り変わりも変化です。2つ目は突然訪れる変化。注目プロジェクトに抜てきされるといったチャンスや、会社が倒産してしまうといったピンチ。これらも自分のキャリアに影響を及ぼす変化です。

 このような変化は基本的に予測ができません。人口動態など予測できる変化もありますが、その変化が自分の職業人生にどう影響を及ぼすかを見極めることは極めて難しいことです。また、たとえ予測できていても、自分の都合で変化を起こしたり止めたりすることは必ずしもできません。つまり、キャリアを考える際には、思いどおりにならない状況とどう付き合っていくか、という視点が欠かせないのです。

ほかにも考えておくべき変化

 では、そういった変化を極力乗り越えて、自分が立てたゴールに向かって突き進んでいけるということが、「変化に強い」ということなのでしょうか。実はもう1つ考えておくべきことがあります。

 それは、自分の考えの変化。上で挙げた2つの変化は、外からやってくる変化でしたが、3つ目の変化は、「内なる変化」ということができます。初めは「技術に詳しくなること」自体が面白かったのに、徐々に「チームで成果を出すこと」に面白みを感じるようになったとか、結婚や出産を機に、人生における仕事の優先順位が変わったなどの変化です。

 皆さんの周りにそういう変化があった方はいませんか。あるいは皆さん自身そのような変化を感じたことはないでしょうか。本連載の第9回の「誰にでも起こる『キャリア・トランジション』とは」では、体を壊したことを機に職種の転換を図った方の話を紹介しました。その方は「“アラーム”が自分の内面から出ているのを感じた」と表現されています。

単線型のキャリア設計は必ずしも変化に強くはない

 自分の志向や優先順位が変わってしまうかもしれないことまで考えると、1つの専門領域だけを深掘りするとか、転職のたびに必ず職位と年収をアップさせるとか、そういった単線型のキャリア設計では必ずしも「変化に強い」とはいえないことになります。以前紹介した『成功して不幸になる人びと』という本からは、内なる変化に合わせて自分の仕事を変えられなかった人たちの事例から貴重な教訓を学ぶことができます。

 わたしがこの「自分戦略を考えるヒント」を書きつつイメージしている「変化に強いキャリア」は、かなり欲張っています。せっかくだから、できるだけ外の変化にも強く、かつ内なる変化にも忠実でいられる。後から振り返って「楽しくやってこられたし報われもした」と思える。そういうキャリアづくりのヒントになることを目指しています。

変化を読み、乗り切る3つの「コツ」

 では、過去のコラムを振り返りつつ、変化に強いキャリアを築くためのコツを3つにまとめてみます。

●先を読む

 1つ目は、「先を読む」。といっても、流行しそうな技術を予測して、そこに賭けろということではありません。確認のために、@IT自分戦略研究所開設時の記事「『外側の尺度』に振り回されない自分を持て」で自分戦略研究所の基本的なスタンスを確認しておきましょう。

 「自分の内側の尺度を見いだすこと、『自分戦略』をつかむプロセスは、社会的文脈だけに振り回されるのではない内側の基準を探し求める道のりでもあります」

 外側を尺度にすると振り回されます。しかし内側だけでは自己満足に陥ってしまいます。いい仕事をして、いい成果を挙げて、社会から認められる。この好循環を目指すためにも、自分なりにできるだけ先を読み、自分をどうやって社会に生かしていくかを考えることは欠かせません。

 本連載の第21回「Steve Jobsのスピーチから読み取る自分戦略」では、ダニエル・ピンク(Daniel Pink)氏の著作を引用しながら、いますでに起きている変化を4つにまとめました。

●偶然を生かす

 2つ目のコツは「偶然を生かす」。

 前述の本連載第4回「誰にでも起こる『キャリア・トランジション』とは」から引用します。

 「現代のキャリア理論は、長期計画をきっちり立てるというよりは、(いきなり会社が倒産するというような)「予期せぬ」事態が現実に起こり得ることを受け入れ、それを生かすことに重きが置かれています」

 これを一歩進めて、積極的に偶然を仕掛けていこうというつもりで書いたのが、本連載第4回「偶然を起こし、偶然を生かす方法」。簡単なワークシートを作ることで、「偶然」と思っていたチャンス(ピンチ)の中にも案外自分の意思がかかわっていることを実感できます。

 偶然はどこから来るのか。多くは知人・友人といった「人のつながり」ではないでしょうか。そこでお勧めしたいのが本連載第12回「夏休みは『人とのつながり』に投資しよう!」です。無理なく「人のつながり」を広げるコツを提案しています。

●試して学ぶ

 3つ目のコツは「試して学ぶ」。いわゆる「自分探し」ばかりでなく、実際に少しずつでも行動してみるということです。このコツには理論的な根拠を添えることはできませんが、本連載第16回「独立したいエンジニアへのアドバイス」や同第17回「出合いの連鎖が新たなキャリアの道をつくる」をはじめとして、わたしの見聞きした多くの事例から帰納的に結論づけることができます。

 自分戦略研究所でも書評(自分戦略研究室 Book Review(8)「自分自身を見つめ直すのに必要なものは?」)で取り上げた『ハーバード流 キャリア・チェンジ術』では、一流のビジネススクールを卒業しながら職業を大きく変えた約40人の方々を対象に調査を行い、下記のような結論を引き出しています。

 「キャリア・チェンジを試みる際の最大の間違いは、目的地を決めてから一歩を踏み出そうとすることだ。この考え方がよい結果につながらないのは、(略)実際に行動し、具体的な選択肢を試すことで人は自分を知るようになるからだ」

 本連載第22回「仕事のポートフォリオを作ろう」では、「研究テーマ」を掲げてみようという提案をしていますが、これも「試して学ぶ」アプローチです。

 また少々文脈は違いますが、本連載第3回「『やる気』がわいてこないときの対処法」では、実際にやってみることが自分の決断を後押しするという効果について述べています。

自ら変化を仕掛けていくくらいがちょうどいい

 こうしてまとめてみると、変化が起きたら「対応」できるようにするというよりは、常に自分から何か変化を起こそうと企むくらいでちょうどよさそうです。

 最後に、変化についての格言をいくつか引用します。

「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」(リクルートの社訓)
「変化はコントロールできない。できるのはその先頭に立つ事だけである」(ピーター・ドラッカー)
「未来を『予測』する最良の方法は、それを『発明』することである」(アラン・ケイ)

筆者紹介
堀内浩ニ●アーキット代表取締役。早稲田大学大学院理工学研究科(高分子化学専攻)修了。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。1998年より米国カリフォルニア州パロアルトにてITベンチャーの技術評価プロジェクトに携わった後、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。2000年に帰国、ソフトバンクと米国VerticalNet社との合弁事業において技術および事業開発を担当。

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