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2011年ITエンジニア転職市場動向〜SI・コンサル業界編

「次に何をすべきか」を提案できるITエンジニアが求められる

2010年、一気に拡大したWeb業界とは対照的に、厳しい状況が続いたSI・コンサル業界。2011年、市場は拡大するのか、また求められる人材はどのように変化するのか。ガートナーのアナリストに話を聞いた。

  市場規模の縮小が続いた2010年

 厳しい経済状況が続いた2010年、システムインテグレータ(SI)・コンサルティング(コンサル)業界はどのような動きを見せたのだろうか。調査会社最大手のガートナー ジャパン、リサーチ部門 シニアアナリストの海老名剛氏は次のように語る。

海老名剛氏
ガートナー ジャパン
リサーチ部門 シニアアナリスト
海老名剛氏

 「2009年、ITサービスの市場規模は大幅に縮小しました。2010年も年初から厳しい年になると想定していましたが、予測通り、新規プロジェクトの需要が落ち込んだことで、市場縮小が続いたといえます」

 図1は、ガートナー ジャパンが2010年9月に発表した2014年までの日本のITサービス市場規模予測だ。これによれば、2010年のITサービス市場規模は前年比マイナス0.7%で推移している。中国・インドなどの成長市場だけでなく、北米・西欧といった先進国と比べても非常に低調な動きだ、と海老名氏はいう。

 日本のユーザー企業の多くには、本業部分の回復を終えてからIT投資を行う傾向が見られる。こうした日本企業の動きの遅れが、2010年のSI・コンサル業界のさらなる市場縮小へとつながった。

2010年9月版 セグメント別 日本のITサービス市場規模予測(出典:ガートナー)
図1 2010年9月版 セグメント別 日本のITサービス市場規模予測(出典:ガートナー)

 ただ、製造業を中心とした一部のユーザー企業では、生産活動とともに業務プロセスが緩やかになったのを機に、既存ITシステムのベンチマーキングやプロセスの標準化・効率化に向けた見直しが図られ、小型のプロジェクト需要が散見されるようになった。しかしこれも、開発の前段階であるITコンサルティングの小型プロジェクトにはつながったが、SI企業の大型開発・導入プロジェクトには結びつかなかった。

 2010年の状況を受けて、2011年のSI・コンサル業界はどのように動いていくのだろうか。

  2011年はプラス成長――ただし、業界には変化の波が

 2011年のITサービスの市場動向について、海老名氏は「市場縮小は下げ止まりで、フラットか、若干のプラス成長に転じると見ています」と語る。具体的な数字予測は、前年比プラス0.8%。前述のベンチマーキングなどのプロジェクトが徐々に実案件化するとともに、経済不況の影響でストップしていたバージョンアップなどの定期サイクルの案件が戻ってくる、と海老名氏は見ている。

 国内ITサービス市場は今後も、ITが基幹業務を支えている製造・金融分野を軸に成長するであろう。特に製造業においては、開発拠点のグローバル化の進行にフレキシブルに対応できるIT活用が求められている。また、サービス・小売・流通分野においては、営業活動の促進に向け、CRM・マーケティング分析・営業支援といったフロント系システムから開発需要が継続していくと見られている。医療・福祉の分野も注目すべき市場だ。規模としては小さいが、比較的経済の環境変化を受けにくく、レセプトオンラインや電子カルテなど医療制度の見直しが今後も続くと見られるため、ITサービス・プロバイダにとってのビジネス機会がある。

 とはいえ、「リーマンショック以前のような市場規模の拡大は見込めないでしょう」と海老名氏は語る。国内市場はすでに成熟状態にあることに加え、SI・コンサル企業に求められる役割が変化しつつあることが理由として挙げられる。

 「基幹業務は競争力の源泉という考えから、標準的なシステムを当てはめるべきではないという頑ななスタンスをとってきたユーザー企業も、コスト削減という大きな命題を前に、適用できるところはパッケージなどで標準化させていこうと発想を変えつつあります。これまでSI企業が軸足を置いてきたスクラッチ型の開発は減少していくでしょう」

 また現在、フロント系の業務アプリを中心に広がりを見せるSaaS型サービスの影響も考えられる。データのインテグレーションの問題や、標準化されているサービス範囲が限られていることから、バックオフィス系をカバーするまでは一般に普及し切っていないとはいえ、一部では従来のオンプレミスからの移行が進みつつある。システム開発の局所化、受注額の減少といった影響は、徐々に大きくなるだろう。

  ITエンジニア“個人”に対する評価が厳しくなる

 2010年はシステム開発需要の落ち込みを受けて、ITエンジニアやITコンサルタントの人材需要もまた、低迷した年だったといえる。とはいえ、一部には慢性的な人材不足があり、継続的に採用を続けていたベンダもあった。

 採用を続けていた企業からは、「業務アプリの導入やプロジェクトマネジメント経験を持った優秀な人材が、以前よりも多く転職市場に現れるようになった」という声が上がったと海老名氏は語る。しかし一方で、「知識が特定の製品に偏ってしまっていて、業務のゴールと結び付けて付加価値を提供できない」という課題を抱えた人材が多い、という採用側の悩みも聞こえてきたという。こうした「転職市場における人材の二極化」により、企業は以前にも増して人材を厳しく見るようになった。

海老名剛氏
「企業ブランドで勝負できる時代から、個人の能力が厳しく見られる時代に変わった」と海老名氏は強調する

 人材の見極めという点では、ユーザー企業側にも共通するところがある。投資効果への意識がますます高まる中、常駐エンジニアに対する評価は厳しさを増しているという。会社名(企業ブランド)に対する期待は薄れつつあり、個人としてのプラスアルファを冷静に判断する傾向が強まっている。

 さらに、ユーザー企業の厳しい目の中、方法論だけのコンサルティングのみでは不十分で、しっかりとソリューションに結びつけた提案力が求められてきている。これまで経営戦略といった上流部分を中心に活躍してきたコンサルティングファームが個々の業務プロセス部分にまで下りてくるようになり、業務プロセスの改善や、それを実現するためのITスキルに優れた人材を一層求めるようになった。大手ベンダにおいても業種特化型の人材を採用しようという動きが続いており、今後IT業界以外からの人材の流入が進むと見られている。現場のITエンジニアやITコンサルタントにとっては、競争相手がさらに増えていくわけだ。

  厳しい状況こそ、差別化のチャンス。自分の価値を見直す機会に

 では今後、SI・コンサル業界を生き抜いていくためにはどうしたらよいのか。海老名氏は「個人が見られているという意識を強く持つべきです」と語る。

 ユーザー企業に納得してもらうためには、求められた要件を満たすだけではなく、「次に何をすべきか、それによってどんな価値が生まれるのか」という“付加価値”を提供できるかがカギとなる。

 また前述の通り、SI・コンサル企業に求められる役割はすでに変化しつつある。アプリケーションの調達手段がスクラッチ・パッケージ・SaaSと多様化したことで、1つのシステムであっても複数のノウハウが必要になった。その中からベストな組み合わせを選択し、提案から実装までの高い要求に応えていくためには、幅広い製品・ソフトウェアの知識と第三者的な視点に加え、ユーザー企業の目的を的確に把握するためのコミュニケーション能力や調整能力、解決策を見い出すための発想力も求められる。

 海老名氏は、こうした能力を「ユーザー企業と深く“同調”する能力」という言葉で表現する。発注側と受注側という関係ではなく、いかにユーザー企業の課題を「自らのこと」として引き受け、深く考えられるかが、今のITエンジニアには求められている、ということだ。

 さらに、ユーザー企業の海外進出が進む中で、ITエンジニアに求められる能力が変化してきている。ただ語学力があって自分の仕事がこなせればいいというだけではなく、ユーザー企業や現地のパートナー企業としっかりコミュニケーションを取って協業していく、というマインドとバランス感覚が求められるだろう。

 SI・コンサル業界のITエンジニアやITコンサルタントに求められるスキルは、今後より幅広く高度になっていくと考えて間違いない。しかし、要求が高まれば高まるほど、逆に「個人としての差別化のチャンスが生まれる」と海老名氏は語る。これまでの自分のキャリアを振り返り、自分の価値を改めて確認することが、次なるステップへとつながるだろう。


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提供:マイナビ転職
企画:アイティメディア営業企画
制作:@IT自分戦略研究所 編集部
掲載内容有効期限:2011年2月28日

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