「転職には興味があるが、自分のスキルの生かし方が分からない」「自分にはどんなキャリアチェンジの可能性があるのだろうか?」――読者の悩みに応えるべく、さまざまな業種・職種への転職を成功させたITエンジニアたちにインタビューを行った。あなた自身のキャリアプラニングに、ぜひ役立ててほしい。 |
第5回 「顧客のためのシステム開発」実現を目指し、SEからITコンサルタントへ
今回のテーマ:SIerのSEからITコンサルタントへの転職 | ||
●転職者プロフィール ウルシステムズ株式会社 シニアコンサルタント 植田昌司さん(37歳/転職6年目) 【仕事内容】 システムの受託開発 → 顧客企業の プロジェクトマネジメント支援 |
顧客の視点に立って、経営にコミットしたソリューションを提供するITコンサルタントは、ITエンジニアが将来的に目指す職種として非常に高い人気を誇る。しかし、ITコンサルタントの仕事のイメージがわかず、どんなスキルが求められるのか分からないという人もいるだろう。
今回紹介する植田昌司さん(37歳)は、もともと大手システムインテグレータ(SIer)に10年間勤務していたが、あるITコンサルタントとの出会いをきっかけとして転職を決意。2005年『ウルシステムズ株式会社』に転職し、ITコンサルタントとしてのキャリアをスタートさせた。その決断に至るまでの経緯と、転職後の現状について話を聞いた。
大手SIerで技術力・コミュニケーション力を習得 携わったプロジェクトの赤字が1つの転機に |
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東証一部上場企業の大手SIerで10年間、システム開発に従事していた植田さん。クライアント・サーバ(C/S)型システムや、Webなどのオープン系システム開発を手掛け、プログラマからプロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャと順調にキャリアを重ねていた。そんな植田さんの成長を支えてくれたのは、当時の上司だった。部下に仕事を任せるタイプで、植田さんは新人のころから1人でクライアントと打ち合わせをしていたという。
「上司は、10できそうだなと思った部下に、100やらせるタイプでした(笑)。プレッシャーもありましたが、何年も顧客の顔を知らずに働いていた同期を見て、自分は恵まれているなと感じましたね。プログラミングスキルはもちろん、顧客とのコミュニケーション力がすごく身に付きました」
エンドユーザーの喜びの声を直接聞ける立場での仕事に、植田さんはやりがいを感じていた。だが、入社8年目に転機が訪れた。携わっていたプロジェクトが赤字を出してしまったのだ。
「わたしはそのプロジェクトでは仕様を握っていました。現場での仕様変更に応じたコストの増減を書類にし、逐一コスト管理の担当者に渡して、顧客と交渉してもらっていました。でも顧客の方で、実はその書類を内部に回していなかったんです。本来であれば1つ1つ合意を取らなくてはいけないのに、積もり積もってから『そんなお金は出せない』という話になってしまいました」
その時、クライアント側には、あるITコンサルタントが付いていた。そのITコンサルタントとの出会いが、植田さんにとって転機になった。
納得できないITコンサルタントの仕事ぶりが反面教師に 「顧客のためのシステム開発」を実現するべく、転職を決意 |
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「その人は、ITコンサルタントの本来の役目を果たしていなかったと思います。ベンダからの話を、顧客にとって都合の良い話に変えて伝え、顧客からの話は大きくしてベンダに伝えていました。政治的に立ち回るところもありました。例えば顧客へ弁明する場を設けられたときには、直前まで『一緒に説明しましょうね』といっていたのに、いざ顧客を前にすると『今回のミスについてベンダ側の言い分を聞きましょう』と手のひらを返すんです(笑)」
転機となった、あるITコンサルタントとの出会いを話す植田さん |
植田さんはそんなITコンサルタントを見て、「こんな人がいる限り、顧客に幸せを与えるシステム開発はできない」と感じたという。「プロジェクトを引っ掻き回しているだけで、顧客の幸せのために何かをしようとしているわけではない。そんな人がコンサルタントを名乗っているから、日本のシステム開発はうまくいかないんだ」。そう植田さんは考えた。
「顧客にとって本当に役立つシステム開発を実現するために、自ら顧客の側に付けるコンサルタントになろうと決意しました。ただ、赤字を出したまま辞めるのは負けたみたいで嫌だったので、次のプロジェクトで必ず黒字を出してから辞めよう、と思いました」
その言葉通り、植田さんは次のプロジェクトで、高い利益率で黒字を出した。その後、転職活動を始めた植田さんはヘッドハンティング会社を利用し、『ウルシステムズ』と出合った。
「もともとメディアを通じてウルシステムズのことは知っていましたが、実際に面談を進めていく中で、ウルシステムズが『顧客の側に立つコンサルティングカンパニー』であることが分かり、ぜひここでチャレンジしたいと考えるようになりました。また、面接日時の調整や、現場社員との面会など、個人的な要望にスピーディーに応えてくれたので、すごく誠実な会社だと思いました」
ITコンサルタントとしての自分の強みを自覚 資料作りのスキルは現在も勉強中 |
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SIerにいたころは受注者側の立場からしか発注者を見たことがなかった植田さんは、ITコンサルタントを目指すに当たって、「とにかく発注者の近くに立ってプロジェクトを見たい」と考えていた。そんな植田さんが転職して最初に携わったのは、顧客の情報システム部門のプロジェクトマネジメント支援だった。発注者側を見られる面白さに加えて、SIerにいた自分だからこそやれること、やるべきことがあると感じた。
「実際にシステムを作るSIer側の視点だと、見えづらい『顧客の考え』がたくさんあるんだなと感じました。だからこそ、発注者側と受注者側の考え方にギャップが生まれるのだということを、肌で感じました。かつてSIerにいた自分なら、過去の経験を生かして顧客とSIerの間のギャップを埋められると思ったんです」
発注者側と受注者側の考えの差を埋める。そのためには、植田さん自身が双方の“本音”を知ることが重要だ。SIerの本音は分かるとしても、顧客の本音はいかにして引き出したのか。
「仕事の堅い話しかできない人に、顧客は気軽な相談をしてはくれない、とわたしは思っています。ですから、まずは『植田は話しやすいやつだな』と思ってもらえるように努力していますね。あとは、自分の考えを伝えることを怖がらない、というのが重要です。顧客の状況や考え方を知らないうちは、的外れなことをいってしまうこともありますが、そのときは謝ればいいのです」
本音でぶつかることで、本音を引き出す。これが、顧客の信頼を得る秘けつのようだ。
SIerでの経験や持ち前のコミュニケーション力を存分に生かしていた植田さんだったが、転職してから非常に苦労したことがあるという。それはITコンサルタントとして活躍する上で避けては通れない関門――資料作りだ。
「コンサルタントは、自分が『こうした方がいい』と考えたことを正確に顧客に伝え、決断してもらい、動いてもらう必要があります。そのためには、何の話をするにしても分かりやすい資料が必須。SIer時代は資料のクオリティはそれほど求められなかったので、転職後は本当に苦労しました。最初は先輩や顧客から『何をいっているのか分からない』と怒られてばかり。でもそのおかげで、いまは『必要な情報』と『邪魔な情報』の整理ができて、転職直後に比べたら随分マシになったと思います」
現在もITコンサルタントとして、システム開発を支える要件定義やマネジメント支援に取り組んでいる植田さん。どんなに小さなことであっても、顧客の気付いていない課題に気付き、悩みに悩んで考えた提案に「そうだね」といってもらえたときが、最高に気持ち良い瞬間だという。
最後に今後の課題について語ってもらった。
「いま、自分の作った資料で動いてもらえる相手は、直接話せて、考え方を知っている人だけ。その上にいる経営層を動かせる資料を作れといわれても、いまの自分には全然、作れないと思います。でも、最終的に決断を下すのは経営層なので、彼らを動かせるような資料が作れなければ、顧客にとって真に役立つITコンサルタントとはいえません。まだまだスキルが足りなくて、勉強することはたくさんありますが、いつかはそんなITコンサルタントになりたいですね」
●ウルシステムズ株式会社の人事に聞いた、植田さんの評価ポイント ウルシステムズの採用では、開発技術・要件定義・プロジェクトマネジメントなど、いずれかの分野で、ITに関する卓越した専門知識を身につけていることが必須です。また、SEからコンサルタントに転身するために不可欠なコミュニケーション力や論理的思考能力も重視しています。 植田はオープン系システム開発の経験の中で、特にプロジェクトマネージャとして泥臭い経験をしっかりと積んできたことや、コミュニケーション力が高いことを評価しました。また、顧客側でシステム開発の問題点を解決し、顧客を幸せにしたいという強い思いも、当社の方向性と合致していました。 |
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提供:マイナビ転職
企画:アイティメディア営業企画
制作:@IT自分戦略研究所 編集部
掲載内容有効期限:2010年7月29日