「転職には興味があるが、自分のスキルの生かし方が分からない」「自分にはどんなキャリアチェンジの可能性があるのだろうか?」――読者の悩みに応えるべく、さまざまな業種・職種への転職を成功させたITエンジニアたちにインタビューを行った。あなた自身のキャリアプラニングに、ぜひ役立ててほしい。 |
第4回 「テスト手法を追求したい」という思いをかなえるため、SEから研究開発へ
今回のテーマ:興味のある専門分野に特化した職種への転職 | ||
●転職者プロフィール 株式会社ワークスアプリケーションズ アドバンスド・テクノロジー&エンジニアリング本部 技術基盤開発グループ 萩倉健支さん(31歳/転職1年目) 【仕事内容】 金融機関のシステム構築 → 自動テストツールの開発、会計パッケージソフト開発のサポート |
技術志向のITエンジニアであれば、「自分が興味のある技術・分野をとことん突き詰めて研究したい」と考えたことが少なからずあるのではないか。とはいえ、個人レベルで研究をしていくというのも、日々の業務をこなしながらでは、なかなか難しい。
今回紹介する萩倉健支さん(31歳)は、「テスト手法を研究したい」という思いを、大手ERPパッケージメーカー『株式会社ワークスアプリケーションズ』の研究開発部門に転職することで見事に実現させた。システムエンジニア(SE)から研究開発エンジニアにキャリアチェンジするまでの経緯や、転職後の変化はどのようなものだったのか、話を聞いた。
SEとして一通りの開発プロセスを経験 その中で“テスト手法”に興味を持った |
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大学院にて情報系を専攻。卒業後、萩倉さんは大手外資系IT企業へと就職した。そこで4年間、SEとして金融機関のシステム構築案件に従事し、仕様検討から導入まで一通りの業務を経験。クライアントとの折衝など、業務にはやりがいも感じていたが、入社して3年が経過したころから、少しずつ転職を考えるようになったという。
「スキル面で感じていた不安が、転職を考え始めた理由です。金融業界の同じクライアントのシステムにしか携わっていなかったので、その知識やスキルが果たしてほかで生かせるのか、疑問がありました。また、わたしが行うのは仕様の策定までで、開発は協力会社にお任せしていたため、自分自身でものづくりをしたいとも感じていました」
そんな思いを抱える一方で、萩倉さんはシステム開発プロセスの中でも、特にテストフェイズに興味を持つようになったという。その会社ではテストについて統一された手法がなかったことがきっかけだった。
「みんな各自の経験に基づいてテストを実施しているだけで、統一されたやり方がなかったんです。でもWebや雑誌で探してみると、しっかりとした学術的手法もあることが分かりました。そこで、効果的で体系的なテスト手法を学び、それを広めていきたいと考えました」
しかし、テストに関する興味はあくまで趣味の範囲で、この時点では直接的に転職先の意向とは結びついていなかった、と萩倉さんは語る。実際、入社4年目に転職活動を始めたときも、企業を選ぶ基準は「自分で開発ができる環境であること」と「技術的な強みを持っている企業であること」の2点だった。
自分の興味と会社の方向性が一致 研究開発エンジニアへのキャリアチェンジを決意 |
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転職活動自体は、「良い会社が見つかれば」くらいの気持ちで気楽に取り組んだそうだ。転職サイトやエージェントを利用しながら検討した4社の中に、『ワークスアプリケーションズ』が含まれていた。当時、同社はパッケージソフトの機能拡充だけでなく、品質向上への取り組みにも更に重点をおいてもきちんと目指していこうと動き始めていたところだった。
テスト手法に対する思いを語る萩倉さん |
「2次面接で会った技術部門の最高責任者に、『技術開発部門があって、そこでさまざまな分野の研究開発ができる』という話を聞いたんです。品質向上のための研究をするということは、興味のあったテスト手法の研究もできるのではと思い、面白そうだと感じましたね」
企業側のニーズと萩倉さんの興味が一致したことが、転職の決め手となった。
研究開発というまったく異なる職種に挑戦することに対して、ためらいはなかったのだろうか。
「4年間で一般的なシステム開発の全体を経験し、時間やコストの掛かる部分を大体、把握できたと思います。そのため、テストフェイズを削減できれば、全体でどれだけ効率化できるかということも具体的にイメージできていました。だからこそ、テスト手法を突き詰めて研究していこうと決心できたんです」
自分で時間をコントロールしながら、研究に没頭できる 情熱があるなら、こんなに楽しい仕事はない |
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ワークスアプリケーションズの研究開発部門である技術基盤開発グループは、先端技術を研究し、それを既存のパッケージソフトにどう生かしていくかを考えることがミッションだ。加えて、社内からのニーズに応えるための研究開発も行っている。萩倉さんは入社後まず、回帰テストで使用する社内向けの自動テストツール開発に取り組んだ。
「スケジュール管理が個人の裁量に任されていることに、働きやすさを感じました。以前の職場だと、時間をどうプロジェクトに使ったかということを、一時間単位で記録しなければなりませんでした。ここでは、大まかなスケジュールがあった上で、成果をきちんと報告すれば、プロセスは本当に自由で、研究者として研究に没頭できる環境があります」
スケジュールに追い立てられることなく、自分の研究に没頭できることが何よりのやりがいだと萩倉さんは語る。さらに、同じ研究開発部門のメンバーの存在も、大きな刺激になっているという。
「周りのメンバーは、良い意味でオタクですね(笑)。自分の好きな分野をとことん掘り下げるのが好きというタイプが多いです。お互いが違う分野にアンテナを張っているので、情報共有を行うことで刺激を受けています」
研究開発エンジニアに必要な素養は、スキルよりも「その技術がどれだけ好きかという情熱」だと萩倉さんは語る。家に帰っても研究したいと思えるくらいの情熱があれば、「こんなに楽しい仕事はない」という。
自動テストツールの開発に4カ月間取り組んだあと、現在はそこで培ったノウハウをプロダクトに生かす目的で、会計パッケージソフトの開発にヘルプとして参加している。テストフェイズをしっかり開発プロセスに盛り込み、リファクタリングに取り組むという仕事にも、大きなやりがいを感じているという。
最後に、萩倉さんの今後の目標を聞いた。
「まずは自社製品の品質を上げることに注力したいですね。その後は、テスト手法やツール、事例を外部にもどんどん紹介していきたいと考えています」
●株式会社ワークスアプリケーションズの人事に聞いた、萩倉さんの評価ポイント 基本的に当社では、「問題解決能力」の有無をポイントとしています。更に研究部門においては、情報工学における深い知識と、プログラムセンスを重視して評価ポイントとしております。 萩倉さんの場合は、その高い問題解決能力はもちろん、何よりもプログラミングにおける深い知識とセンスをお持ちであることを評価いたしました。加えて、テスト手法という、当社の方向性と一致した分野への興味関心を持っていたことも評価対象になりました。また、誠実で自分を飾り過ぎない人柄の面も評価し、採用に至りました。 |
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提供:マイナビ転職
企画:アイティメディア営業企画
制作:@IT自分戦略研究所 編集部
掲載内容有効期限:2010年6月30日