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2010年 ITエンジニア転職市場動向〜SI・コンサル業界編

2010年、IT業界はどのように変わるのか。今後の転職市場を探るべく、SI・コンサルティング業界の動向と今後について、ガートナー ジャパンの見解を基に、これからの有望な市場について見ていこう。

  IT業界2010年の景気、当面は低空飛行。転職市場も厳しい

 システムインテグレータ(SI)・コンサルティング(コンサル)業界は、2010年度どのように動くのだろうか。

ガートナー ジャパン リサーチソーシング シニアアナリストの海老名剛氏

 調査会社最大手のガートナー ジャパン リサーチソーシング シニアアナリストの海老名剛氏は次のように語る。

 「SI・コンサル業界の動向は、全般的に、2008年度は低調ではあったものの、プロジェクトの受注残があったため、ほぼフラットな成長率で推移しました。しかし2009年は、ユーザー企業のIT投資が抑制されたため、マイナス5%程度まで落ち込む可能性があります。2010年にすぐ景気が回復するということは難しく、当面は低空飛行が続くでしょう」

 当然ながら、転職市場も厳しい。一般に、「ITエンジニアの数は足りない」といわれてはいるものの、それはプロジェクトマネージャなど上流工程に近い分野の話だ。同社 リサーチソーシング リサーチ ディレクターの足立祐子氏は、「コーディングなど、下流工程に近い分野のエンジニアほど、人件費が安い海外のエンジニアに取って代わられています」と述べている。

  ITサービス需要が伸びる有望な市場は?

 まだ見通しが暗いと予測される2010年だが、ミクロ視点から見ると、どのような変化が起きるのだろうか。

 図1は、ガートナー ジャパンが2009年11月に発表した2013年までのITサービス市場規模予測だ。右に行くほど成長率が高く、また上に行くほど市場規模が大きい業種となる。

図1 ITサービス市場規模予測:垂直産業別成長率と市場規模の相関(モデレート・ケース)(2008〜2013年)出典:ガートナー(2009年10月)

 これによると、国内産業は圧倒的に金融・製造の市場が大きく、成長の減速感も強い。この2業種に特化してITサービスを提供していたSI企業の業績は、2009年非常に厳しかったはずである。一方、通信や自治体、医療/福祉系は、パイは小さいが、成長率は比較的堅調である。ただし海老名氏は、「同じ額でも、市場規模によって成長率に与える影響が異なりますから、一概に、金融・製造は成長性がなく、右側部分が成長株だとはいえません」と注意を促す。

 足立氏・海老名氏によると、「今後、システムの開発需要が回復するのは、金融・製造から」という見方が強い。その理由は、両産業ともITが基幹業務を支えていること、グローバル競争にさらされていること、そして景気の回復期の一手として着々と業務プロセスのITによる効率化を検討し始めている企業が多いことが挙げられる。

 具体的な開発ニーズを挙げると、製造業なら、グローバルSCMの最適化が筆頭だ。「中国一辺倒だった製造拠点が、ベトナムやロシアへとシフトし、マーケットもグローバル化の一途をたどっている」(ガートナー 足立氏)。海外における製造拠点の変化に柔軟な対応ができるITが求められているわけだ。金融ならば、販売チャネルの統合や共同利用型センターのアウトソーシングなどが挙げられる。また、個人情報の漏えいやフィッシング対策など、リスクマネジメントやセキュリティへのニーズも高い。

  2010年、ITエンジニアにはこれまでと異なるスキルが求められる

ガートナー ジャパン リサーチソーシング リサーチ ディレクターの足立祐子氏

 足立氏は以上の状況から、「2010年のIT投資は全般的に低空飛行ですが、景気回復を見越したユーザー企業がIT投資に積極的な姿勢を見せはじめるのでは」という見解を示す。その場合、実際に売り上げとして計上されるのは2011年以降になるが、2009年に比べると、カネ・人材の凍結が若干緩やかになるという足立氏は予測している。従って、2010年の中旬からは、IT企業の求人需要が徐々に上向くと考えられる。

 ただし、求人が増えてくるといっても、ITエンジニアの転職が有利(楽)になるわけではない。その理由は3つある。

 第1に、コンサルタントの需要に比べ、ITエンジニアの需要はなかなか増えないということだ。なぜなら、開発の前段階であるコンサルティング業務から最初に“IT投資の波”が来るためである。たとえ景気が回復しても、企業は大掛かりなIT化を進めるのではなく、ROIを考慮し、効率的に(IT化を)進めると予想される。そのため、まずは上流部分でしっかり戦略基盤を作っておくという企業が増えるはずなのである。この動きはもちろん将来のIT投資を見込んでのことであり、コンサルティング企業もこのニーズに対応すべく、これまで以上にSI企業との協業に力を入れてくる可能性がある。

 第2に、これまでのような大型のシステム開発案件が減り、ITエンジニアの大量採用が減ると思われること。例えば、SOAプロジェクトは巨大プロジェクト化の傾向があったが、今後はプラットフォームとしてSaaSを利用するなど、アプリケーションの調達方法そのものが変化する。結果的に、手組みやパッケージの導入は減り、局所的なシステム開発が増加する可能性がある。必然的に、1件当たりの受注額は小さくなり、求人数は減る。

 第3に、これまでと異なるスキルを持つ人材が必要になるということだ。「技術や案件の内容の変化により、ITエンジニアに求められるスキルにも変化がおとずれるでしょう」というのが、足立氏・海老名氏の意見である。

  業界動向から見るスキルの変化

 ITエンジニアに求められるスキルの変化は、「戦略」「調達」「インテグレーション」の3分野に分けられる。まず「戦略」とは、今後進むと予想される“グローバル化”に対応できるコンサルティング立案ができるかということ。そのうえで、アプリケーションの「調達」も、“クラウド/SaaSの利用”か、あるいは現在減少傾向にある一からの“手組み開発”、“パッケージ導入”といった選択肢の中から、ユーザー企業の戦略に基づき、最適な方法を見きわめられる人材が求められる。当然、社内外を含め、最適な業務プロセスを設計し、「インテグレーション」できる技術力も必要だ。

 さまざまなテクノロジを組み合わせ、ユーザー企業の戦略に合ったシステムを立案するスキルを持つコンサルタントやITエンジニアは不足しており、「キャリアモデルとなる先人の前例を踏襲できない」という難しさがある。当然、教科書やベストプラクティスはない。この状態で、今後発生するユーザー企業からの要望に、どこまで対処できるか。これはITエンジニア個人だけではなく、コンサルティング/SI企業に突きつけられた大きな課題だ。

 金融・製造業を皮切りに、ほかの業種からも、こうした新しいニーズが出てくるだろう。ITエンジニアとして飛躍するためには、 “次”のニーズが見えている業種でスキルを磨くのが、キャリアプランを考えるうえで必要なことである。

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提供:マイナビ転職
企画:アイティメディア営業本部
制作:@IT自分戦略研究所編集部
掲載内容有効期限:2010年1月31日

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