ドS美人面接官vs.モテたいエンジニア 転職十番勝負!
第4回 面接会場の長い廊下を抜けると××であった
試練4:志望理由
野望を胸に秘めて転職を志す、とあるエンジニア(28歳)がいる。
季節は夏へと移り変わるも、彼の転職活動はまだまだ続く。たとえ最高気温が35度を超えても、スーツで面接会場へと向かうのだ。そんな彼を今回襲うのは、果たしてどのような試練なのか……。
(面接の待合室で)ううう、暑いぜ……。夏場の面接は本当にキツい……。思考能力がどんどん失われていく……。頭の中で組み立てた段取りが、面接会場に着く前に汗と一緒に流れ出しちゃった気がする……。それにしても、面接開始までにずいぶん待たされるなあ……。しかもクーラーないとかあり得ないし……。 |
準備ができましたので、次の方、どうぞお入りください。 |
失礼します……ん? あ、ああ……。よろしくお願いします。 |
そんな反応しかできないということは、脳がこの暑さですでに機能停止していると考えていいのかしら。 |
(棒読みで)うわー、なぜまた面接官が同じ人なのかー。 |
では、弊社を志望された理由についてお聞かせ願えますでしょうか。 |
あっ無視された! ……はっ! そ、そうだ、闘いはすでに始まっている……! 気力をふりしぼれ! ゆうべ徹夜で組み立てた志望動機を思い出すんだ!! ……そ、それではご説明いたします。 えー、御社を志望しましたのは、御社が中心理念とされている「より良いサービスの提供」が、まさにインターフェイスの改善を担当していた自分にマッチしていると考えたからです。 「改善」というのは私が大事にしているキーワードの1つでして、Excel書類の整理など大好きでした。ただ、前職ではそういう改善の仕事が少なくなってきまして、会社の今後があまりないなと感じ、もっとユーザーに近い場所で仕事がしたいと思いました。えー、それから、近いといえば、自宅から電車で10分という御社の立地も非常に魅力的で……。 |
(ぱんぱん)(手をたたく) |
えっ、手をたたいたのはなんの合図……おわぁ!?(どっぼーん) |
海の中は涼しいでしょう? 暑さにやられていた頭もすっきりするんじゃないかしら。 |
あっ、この面接会場って船の上だったんですか!? やたら長い廊下だったけど、あれが桟橋だったのか! ずっと微妙に揺れてるような気がしたのは、目まいか何かかと思ってた……! |
あなたが待合室にいる間、船は沖へ向かって進んでいたのよ。岸が遠くに見えるでしょ? あなた、泳ぎはあんまり上手じゃなさそうね。 |
あのっ、すいません、引き上げていただけませんか……?(ばしゃばしゃ) |
さて、ここからは敗者復活戦です。岸まで自力で泳ぎ着くことができたら、その所要時間に応じてボーナスポイントが与えられます。ここまでの面接の点数とボーナスポイントの合計が合格点に達していたら、面接に再度チャレンジする資格が与えられます。ご健闘に期待します。では、スタート!(ぼわーん)(ドラの音) |
そんなむちゃな――っ!! |
ゲーミフィケーションという言葉をご存じかしら。課題解決のプロセスになんらかのゲーム性を導入し、ゴールへのモチベーションを高める手法よ。当社では、これを業務全般に採用し、目覚ましい成果を挙げています。 会社紹介にもそう書いてあったはずだけれど、読んでないのかしら? それを知っていれば、面接にも同じ手法を取り入れていることを、容易に予想できたはずなんだけれど。 |
いやこれ、ゲームにしては過酷すぎるっていうか、ぼくあんまり泳ぎが得意じゃないんで、うわっ(波をかぶる) |
ゲーミフィケーションの手法は、若干のデスゲーム的な性質を帯びたときに効果が最大になることが、当社の調査によって明らかになっています。 |
そ、そんなの、単なる独自研究じゃないですか! インターネット百科事典でやると管理者に警告されるやつ! |
ここはインターネットじゃないのよ、ぼうや。 |
ぼ!? |
あなたも、世界のすべてを表象するかのような錯覚をもたらしつつ、実態としては矮小(わいしょう)な価値観の中の閉塞したインターネットコミュニティで、電子的なアテンションの獲得にばかりきゅうきゅうとしているうちに、現実世界の競争に勝利する力を失ってしまった現代的な腰抜けの一匹にすぎないのかしら? 温暖な真夏の海をほんの1キロばかり泳ぎきれないようじゃ、過酷な開発をこなせるとはとても思えないわね。 |
なんかもう、いじめたくて落としてるとしか思えないですよね? |
浅はかな被害妄想ね。あなたにペナルティを課すのはもちろん楽しいけど、落とすのはちゃんとした理由があってのことよ。意地悪じゃなく、あなたははっきりと当社の選考基準を満たしていません。 |
やっぱり楽しんでるんじゃないですか! ぼくの志望動機のどこがいけないんですか!? |
あら、ここで説明タイムにしてほしいの? まあそれでもいいけれど、ピーッ!(笛を鳴らす) |
えっなんの笛……うわーっ!! さ、鮫っ! |
あなたと違ってよく訓練された動物なので、危害を加えることはありません。さて、頑張って泳ぐ気になったかしら? |
お、泳ぎます! 泳ぎますから遠ざけて……! |
さて、あなたのする志望動機の説明は、製品の用途すら理解していない外注スタッフが見当はずれな項目のテストをそそくさと通した結果生まれた、バグだらけの残念プロダクトのようなオーラをさんさんと放っています。 論理性の欠如、情報の整理不足など、これまでにも指摘された上位レイヤにおける不備を継承しつつ、当該のポイントにおいても致命的な不具合をかかえている。これが製品だといわれたら、法的な対応を検討するレベルね。 |
そ、そこまでですかあ!? |
あなたが面接において示さなければいけないのは、あなたが弊社にとって雇用するに値する人材であるということ。まず、そこをちゃんと理解しているかしら? 志望動機をどのように説明するかを考える中で、志望会社への理解が十分に深まったかどうか。そこで自分がどんな役割を果たし得るかについて、十分に検証したかどうか。創造的なプロセスとして検証作業そのものに取り組んできたかどうか。採用側が着目するのはそういうところです。志望動機を問われることは、創造性を問われることと同義なのよ。 |
創造性……! |
あなたが、具体的にどのような形で弊社の求める条件にマッチしているか、それを示すための重要な局面が、この「志望動機の説明」のフェイズ。 ここであなたが十分に説明しなければいけないのは、次の2点です。 まず、あなたが志望先の企業を十分に理解しているかどうかということ。そして、その理解に基づいて、どのようなメリットをあなた自身が持っているかということ。 そのどちらの点においても、あなたの説明は失格です。ダメ。アウト。 |
えええー……。で、でもWebサイトは読んだし、御社のセールスポイントと理念について話したじゃないですか……。 |
弊社のPR文言をそのままオウム返しに繰り返すことが十分な理解のアピールになり得ると、本気で信じてるの? それは確かに弊社の掲げる重要な理念ではあるけれど、もっと具体的な内容を語ってくれないと、まるで説得力がないわ。 |
志望動機を述べるには、まず相手をきちんと褒めること。つまらないお世辞ではなく、「御社はこんなにすてきです」と、心を込めて詳細に、説得力のある形で伝えなさい。 「ただなんとなく好き」といわれるだけで、うれしい相手もいるかもしれない。相手もなんとなくあなたに好意を抱いているなら、それでうまくいくかもしれない。でも、自分のどんなところを好ましく感じているかを具体的に示してくれる方が、よりうれしいに決まってるでしょう。そして、それは、「相手が自分にとってどんなに都合がいい存在であるか」の説明などではないはずよ。 |
恋愛に例えられると、なんだかよく分かるような気がする……。そ、そしてキツい記憶がいろいろ蘇る……! うあああああーー(クロール回転が加速) |
いつの世も、トラウマは人を動かすエンジンとなるものね。いいわよ、楽しいからもっともがきなさい。 さて、その次の問題は、メリットの説明が基本的にどこまでも「自分本位である」こと。あなたが話したことは、志望先が自分にとってどう都合がいいかの説明に終始しています。「仕事がつまらない」「得意なことができない」から「都合が良さそうな御社で働きたい」……。それはつまり「どこでもいい」と豪語しているのと同じなのよ。 あなたは私にこんなすてきなことをしてくれそうなのでお付き合いしたいです、といわれてうれしいと思う? ある面においてもちろんそれは真実だけれど、あなた自身が何を相手に与えられるか、そこのところをきちんと提示できずに、どんな進展があると思うの? 会社で働く目的を突き詰めたら「お金をもらえるから」になってしまうでしょう。でも、こちらはそんなことを聞きたいわけではまったくありません。 |
そ、そうか、自分が相手にどんなメリットを与えられるか、説明できないといけないのか……! |
そもそも、面接というものを恋愛に例えるならば、のどかな1対1のマッチングなんかじゃありえないのよ。それは、無数のライバルがいる中でたった1人の自分を選んでもらう過酷な闘争。 あなた、自分と会社だけしか見えていないんじゃないかしら。相手の求める条件を満たしてさえいれば、会社が自分を選んでくれるに違いないと思い込んでるんじゃないの? 残念ながら、そんなに甘くはありません。あなたには見えていないだろうけれど、こちらからは、あなたのほかにも、たくさんの志望者が見えているのよ。 今のあなたは、その中に埋もれてほとんど顔の見分けもつかないモブの1人、ひょっとするとディスプレイのドット1つほどの存在でしかない。目鼻すら判別できない、単色のピクセル1つ。それがあなたよ。 さて、そういう大勢の中から、どんな1人を私が選ぶと思う? どうしたら、そんな体たらくのあなたが選ばれると思うの? |
……無理っぽいです……。 |
諦めが早すぎる。そこで粘りを見せないでどうするの? ここが敗者復活のアピールの好機でしょ? きちんと巻き返してみなさい! 弊社をもっと褒めなさい! |
あああ……すぐには思いつきません……! |
じゃあすぐに思いつけそうな課題をあげましょうか。私で試してみてごらんなさい。私のどこが好き? |
え……えっ?(赤面) |
私を、自分が口説こうとしている女の子だと思って、褒めてみなさいといってるの。今まで私をどれだけきちんと見てきたかしら? 例えば、毎回髪型が変わっていることにちゃんと気付いてるかしら? |
か、髪型?? いや、そもそもなんで僕が面接官さんを口説く展開に!? |
目を泳がせないで! ちゃんとこっちを見て! |
いや、この状況でちゃんと見ろと言われても! 目っていうか全身を泳がせてますし、おぶッ(海水を飲む)。 |
あらそう。ちゃんと褒めないと、あの生物が襲うわよ。 |
あわわ……! |
髪型なんか全然見ていなかったでしょう。 私のことを真剣に見ていなかったのがバレバレよ。 |
そっ、そんなことないです! いつも真剣に見てます! いやあの、髪型は確かに全然気がつかなかったけど、それはもっとほかのところに気を取られてたからで、あっ、いやいやいや……。 |
何それ。どこに気を取られてたの? もしかして、今まさにあなたの視線がフォーカスしたところ? ……生物! やっておしまい!! |
わーっ! すすすすいませ―――ん!! 鮫は! 鮫だけは! |
バッファオーバーフローwwwwwwwww!! キキキwww |
えっ……。 |
これアルパカじゃないですか!! |
あら、気が付いてなかったの? それはそうとやっておしまい! |
わーっかじらないで痛い痛い! うわあああああ溺れる――――!!! ……あ、あれっ、ここ足が着く!? |
遠浅だから。 |
えっ……遠浅……? こんなに浅いのに、なんでその船は座礁しないんですか? |
船じゃなくて、水陸両用車両だから。 |
お、おう……。 (ミャー ミャー)(ウミネコが鳴く) |
――続く――
イラスト:緑川葉/ad-manga.com
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企画:アイティメディア営業企画
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