マイナビ転職×@IT自分戦略研究所
「キャリアアップ 転職体験談」
第18回 技術は好きだが、ビジネス全体を考えたくなった――SI技術者がコンサルタントに転身した理由
「転職には興味があるが、自分のスキルの生かし方が分からない」「自分にはどんなキャリアチェンジの可能性があるのだろうか?」――読者の悩みに応えるべく、さまざまな業種・職種への転職を成功させたITエンジニアたちにインタビューを行った。あなた自身のキャリアプラニングに、ぜひ役立ててほしい。 |
SIerでの設計・開発→外資系コンサルタントへの転職 | ||
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自分が今作っているこのシステムは、ビジネスの中でどのような役割を担っているのか?
コーディングや設計、運用など、システム開発の全プロセスに関わって、プロジェクトを俯瞰的に見渡せるようになると、「システム」そのものより「システムがどうビジネスに関わるか」に興味がシフトするエンジニアがいる。
アクセンチュアへ転職した塩路慧能さんも、そんなエンジニアの1人だ。現在は、ITコンサルタントとして働いている。
「システムのエンドユーザーと話をするうちに、彼らのビジネスにとって、私が作るシステムがどう関わっているのかということに興味がわいたんです」
「開発が好き」と語る塩路さんが、コンサルタントになろうと思った契機はどこにあったのか?
エンドユーザーと話すことで、システムへの考えが変わった | ||
塩路さんは、大学卒業後、大手電機メーカーで、指紋認証やアイリス認証(目の虹彩による認証)といった生体認証における、大規模システムの分散処理ミドルウェアの開発を手掛けていた。大規模認証システムでは、照合用データの保存や検索が、システム全体の効率を左右する。まさにシステム構築の鍵と言えるミドルウェアを担当していた塩路さんは、当時の仕事に多大なやりがいを感じていたという。
しかし、そんな塩路さんに転機が訪れる。ミドルウェアの開発に携わってから1年半ほど経ったある日、システムの導入に立ち会う仕事を依頼された。
それまで開発に専念していた塩路さんだが、システムが実際に運用される現場へと足を運び、エンドユーザーと話をすることで、システムに対する考え方が少しずつ変化し始めた。
「目の前の開発業務だけでなく、自分が携わるシステムがビジネス全体の中で果たす役割について考えるようになりました」
運用現場のニーズが、新たな開発につながる。エンドユーザーと接することは、システム開発のビジネスにとって、欠かせない要素である。塩路さんは、その後、導入支援の業務を2年ほど続けた。「システムについてよく知っている」と評価され、運用設計なども手掛けるようになった。
今いる会社のやり方だけでなく、他のやり方も学びたい | ||
業務範囲が広がるにつれ、プリセールスや要件定義という、よりエンドユーザー寄りの仕事にも興味を持ち始めるようになった塩路さんは、自分のキャリアアップや、キャリアの方向性について考え始める。会社にとどまり、プリセールスや要件定義の仕事に就くことも考えたが「今いる会社のやり方だけでなく、他のやり方も広く学んでみたい」と思い、転職活動に踏み切った。
塩路さんは、ドイツ人を母に持ち、日本語、ドイツ語、英語を操ることができる。外国語を自分の武器にするためには、グローバルプロジェクトを扱える企業の方がいい。
プリセールスや要件定義の業務があり、グローバルな仕事に携われる企業――塩路さんが転職先を探す際の条件は明確になった。
グローバル企業ならではの責任の大きさが、やりがいに | ||
「大手SIerやITコンサルティング会社など、かなり幅広い企業を受けました」
その中で、塩路さんが最終的に選んだのがアクセンチュアだった。
グローバルを自分の強みにしたいと考える塩路さんにとって、世界120カ国以上の顧客にサービスを提供するアクセンチュアは、理想的な環境だった。
「アクセンチュアでは、1人1人に任される裁量が大きく、責任も大きい、という点も決め手になりました。大変ですがその分、やりがいを感じられるのではと思ったのです。前の会社はチーム単位でプロジェクトを推進することが多く、1人で責任を背負って仕事に臨むチャンスはありませんでしたから」
アクセンチュアに入社後、これまでに、保険会社でのインフラストラクチャ運用モデルの最適化や、証券会社でのデータウェアハウス・レポーティングアプリの性能検証・最適化などを手掛けた。
担当したプロジェクトでは、合併に伴う各社の運用体制の見直しにおいて、運用設計を診断するなど、前職での運用設計の経験が役立ち、また、別のプロジェクトにおいても、ミドルウェアの開発時に得たノウハウが役立った。
コンサルティングという仕事の難しさに直面 | ||
一方で、前職のような担当者レベルでのやりとりとは異なり、顧客企業のリーダークラスから、ときには経営層に対しても直接提案や報告をしていかなければならない、というコンサルティングならではの難しさにも直面した。
経営層に向かって、技術的な視点で提案しても意味はない。同様に、技術の現場にビジネス的な視点で報告しても、的外れになってしまう。そのため、同じ内容を、相手の立場に応じてどう説明するかについては、経験を積みながら学ぶ必要があったという。
現在では、事前に相手の立場を理解した上で、内容を検討してからプレゼンに臨むようにしている。プレゼンのやり方については、先輩たちがかなり詳細なところまでアドバイスをくれたそうだ。突っ込みは非常に厳しいが、そこで得たフィードバック、ビジネス的な視点は、自身の新しいスキルになる。
このスキルは、まさに「ビジネス全体を考えたい」という塩路さんの目的に沿っているため、モチベーション高く、取り組めたようだ。
自分のノウハウを共有し、他のコンサルの仕事にも役立てられる | ||
コンサルティング業務に必要な知識についてはどのように学んでいったのだろうか?
ことは大きなやりがいです」
最初のプロジェクトでは、顧客の課題を掘り起こし、具体的なソリューションへの落とし込みまでを、上司と一緒に進めていったという。
「かなり漠然とした課題でしたが、取り組んでいくうちに、課題を浮き彫りにしていくことができました。その過程で、どうやってビジネスとして成立させていくかを、上司からしっかりと教えてもらいました」
アクセンチュアには、入社後にコンサルティングに必要な知識を習得するための制度がある。各人のレベルや専門分野に対応する何種類ものオンライントレーニングがあり、社内では各種の勉強会も開催されているそうだ。塩路さんは、このような制度を活用していったという。
外資系企業というとガチガチの個人主義を想像するが、「先輩から後輩へ、上司から部下へ、そして日本中・世界中の同僚へ」と、OJTや勉強会、企業情報ポータル「ナレッジ・エクスチェンジ」※を使ってノウハウを共有する風土があるため、人間関係はかなりオープンなようだ。
※世界52カ国24万人以上の社員がアクセス可能な、グローバルレベルの情報共有システム。同社の世界中の拠点から吸い上げられる最新事例や、最先端の技術を使った取り組み事例がデータベース化されている。
「アクセンチュアはプロジェクトごとにチームが編成されるため、そのたびにメンバーも変わり、部門間の壁を感じることはほとんどありません。また、以前に一緒に仕事をしたチームメンバーから情報を得たり、新しいプロジェクトに誘ってもらったりすることも珍しくありません。部門を越えて、人と人とがつながっているのは、面白いところです」
「ナレッジ・エクスチェンジ」を使えば、自分が担当するプロジェクトに関連した先行事例を、社内の誰もが参照できる。
「担当者レベルまでわかるので、データベースには記録されていない詳細部分については、直接当人まで問い合わせることができるのは助かっています」
もちろん、自分が手掛けたプロジェクトも「ナレッジ・エクスチェンジ」に登録している。先日、塩路さんが登録したケースについて、他のコンサルタントから問い合わせがあった時は「自分のノウハウが他の誰かの役に立った」ことに、仕事のやりがいを感じたという。
今後も手を動かして技術にも携わっていきたい | ||
そんな塩路さんの現在の目標は「専門性を極めてキャリアを積み、知見を広めていきたい」というものだ。
コンサルタントとして、ITマネジメント、セキュリティ、データウェアハウスなど、何らかの専門分野を築いていきたいと考えている。
一方、もともと開発エンジニア出身で、「開発が好き」という塩路さんは、できれば現場に近い場所で、技術にも携わっていきたいという。
「現場から離れていると、技術に疎くなってしまうという危機感を常に持っています。自分で手を動かさないと、取り残されていくんじゃないかという不安があります」
現場の技術と、ビジネス上の課題解決を行うコンサルティング。2つの領域において専門性を高め、よりビジネスに貢献できるシステムを世に送り出したい――。
塩路さんは、開発エンジニアから、導入支援・構築エンジニア、そして転職を機に、前職での経験を生かしながら、着実にコンサルタントとして成長している。
自分がどんなスキルを身に付けたいのかをきちんと見極めた上で具体的な行動を起こせば、塩路さんのように、転職で新しい道が開けるかもしれない。
●人事に聞く、塩路さんの評価ポイント 彼の評価ポイントは、大きく2点あります。 1つは、「構造的・定量的な分析を示しながら、会話を組み立てるコミュニケーション能力」。もう1つは、「ビジネスに対する高い意識、技術に対する向学心」でした。 この2点を面接時には会話の中から感じました。かつ、そのコミュニケーションスタイルは謙虚で、物腰も柔らかいですが、それによりかえって奥深さも感じられ、アクセンチュアの一員としてぜひ迎え入れたいと判断しました。 近い将来、彼には高い技術力を持ってグローバルに通用する、ベストプラクティスとなるようなプロジェクトを推進して欲しいと考えています。 |
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企画:アイティメディア営業企画
制作:@IT自分戦略研究所 編集部
掲載内容有効期限:2012年7月31日
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