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ネットワークエンジニアよ、「総合力」を付けろ!

ユニファイドコミュニケーションを活用した企業システムが徐々に浸透してきている。社員間のコラボレーションを促進し、遠隔地コミュニケーションを実現する手段として期待は大きい。こうした状況で、ユニファイドコミュニケーションの主要技術であるVoIP系のネットワークエンジニアに必須なのは「総合力」だ。VoIPエンジニアに求められるスキルとキャリアについて考えた。

    ユニファイドコミュニケーションの肝は「業務改革」にあり

 インターネットの登場によって、最も大きく変化した企業活動といえば「コミュニケーション」だろう。それまでは電話や対面でしかコミュニケーションできなかった人々が、メールやチャットなどで意見を交換し合えるようになった。高価なビデオ会議システムにも、IP網の利用により、より高品質で安価なものが生まれている。

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シスコシステムズ合同会社アドバンスドテクノロジーシステムズエンジニアリング
シニアマネージャー 財津健次氏

 コミュニケーションのインフラ提供において大きな存在感を示しているのが、シスコシステムズ合同会社(シスコ)だ。キャリア各社のバックボーンシステムを構成する大規模ルータやスイッチのほか、メール、音声、FAXなどさまざまなコミュニケーション手段を統合する「ユニファイドコミュニケーション」のソリューションでも広く知られている。同社 アドバンスドテクノロジーシステムズエンジニアリング シニアマネージャーの財津健次氏は、「ユニファイドコミュニケーション分野は、シスコの最重要事業の1つに位置づけられています」という。その要素技術として、最も有名なものはVoIP(Voice over Internet Protocol)だ。財津氏自身、VoIP分野のエンジニアとして10年近く活躍してきた。

 なぜユニファイドコミュニケーションが企業にとって有益なのか。財津氏は、「その最大の功績は、社員間のコラボレーションを迅速かつ容易なものにしたこと」と述べる。技術によってコラボレーションが促進されるということは、意思決定が早くなることを意味する。加えて最近は、「VoIPの発展により、業務アプリケーションと絡めた業務改革ソリューションを提示することが、企業に対する大きな訴求ポイントになっています。そのため、VoIPに携わるエンジニアには、電話についての基本知識のほかにも“総合力”が求められるのです」と財津氏はいう。

    アーキテクチャのタテ・ヨコ2軸を統合する技術

 シスコが提示するネットワークインフラからアプリケーションまでのアーキテクチャを見てみよう(図1)。緑字で書かれた部分が、シスコの製品である。

図1 シスコユニファイドコミュニケーションの構成要素

 最下層である第4層に位置するのは、ルータやスイッチなどのインフラ部分で、シスコの最も得意とする分野だ。同社はこの層の技術を総称し、「ファンデーション・テクノロジー」と呼んでいる。最近では、第3層の制御装置も併せ“ネットワークインフラ”とする傾向が強いそうだ。

 第2層以上は、インターフェイスやアプリケーションを含めた付加価値部分であり、同社では「アドバンスドテクノロジー」と呼んでいる。「このアドバンスドテクノロジーこそ、当社が提供するユニファイドコミュニケーションの根幹に当たります」と財津氏は話す。

 ユニファイドコミュニケーションを提供するベンダは数多いが、シスコならではの特徴とは何か。それは、他社アプリケーションとの相互接続性だ。

 例えば、第2層の「Endpoints」では、シスコ自身が提供するIPフォンやビデオターミナルのほかに、マイクロソフトやIBM製のコラボレーションツールを搭載することも可能。最上層に位置する「Applications」も同様だ。このように、ネットワークインフラからアプリケーションに至るまで、タテ・ヨコの相互接続性が高いのが、シスコが提供するインフラの最大の強みだ。「その理由は、今日のユニファイドコミュニケーションに対する期待感が、『アプリケーションを含めた業務改革を実現する』というレベルにあるからです」(財津氏)。「ネットワーク部分だけだと、『業務改革』というレイヤがなかなか見えません。アプリケーションや携帯端末などと組み合わせることで、『顧客満足度の高いコミュニケーションによる売り上げ増』という効果が見えるようになります」(財津氏)。

 「そのため、ユニファイドコミュニケーションを担うエンジニアには、ISDNやH.323規格といった通信網の知識から、アプリケーションを連携させるSOAP/XML、JTAPI(Java Telephony API)/TAPI、SIP(Session Initiation Protocol)などまでに関する知識も必要です」(財津氏)。もちろん、QoSや帯域制御、冗長性をどのように設計するかというスキルも必要で、アプリケーションを連携させる際にはシステム全体のスケーラビリティも考慮しなければならない。これだけの知識を、1人のエンジニアですべてまかなうのは難しい。携帯端末と組み合わせたソリューションを提供する場合は、どの携帯電話がどのOSを使い、どんなアプリケーションが搭載できるかという細かな部分の知識も必要になる。平たくいえば、自社製品以外の技術にも目を向けるという意識が必要なのだ。

    VoIPプロジェクトを動かすには総合力が必要

 ただし、「ひと口にエンジニアといっても、プリセールス系と、インプリメンテーション系で、求められる知識は変わってきます」と財津氏はいう。具体的にいえば、プリセールス系のエンジニアには、より“目に見える層”、つまりアプリケーションとの連携や携帯端末に関する知識、スケーラビリティ設計などのスキルが重要になる。インプリ系ならば、下層レイヤまで見越したプロトコルの知識が必要になる。

 実際、ユニファイドコミュニケーションを導入する企業側にも、システム担当者から通信インフラの管理者、業務担当者とさまざまなスタッフが登場するのが通例。「あらゆる技術が複雑に絡み合うので、システムを総合的に見られるコンサルタントやエンジニアの存在がプロジェクト成功の肝となります」と財津氏も述べるほどだ。いい換えれば、これからのネットワークエンジニアには、「総合的な技術力」が問われるのだ。

    CCIEはネットワーキングプロフェッショナル証明の手段

 さて、こうした傾向は、ネットワーク系資格試験にどのような影響を与えているのか。

 シスコの最高位認定資格であるCCIE(Cisco Certified Internetwork Expert)は、「CCIE Routing and Switching」「CCIE Security」など5種類あり、うちVoIPにかかわる試験が「CCIE Voice」である。出題範囲は、前出の図1にある緑字の部分すべてだ。ユニファイドコミュニケーションを構成するシスコ製品すべてについての技術知識のほか、各種通信プロトコル、さまざまなAPIに関する知識が求められる。まさにネットワークの総合力を問う試験内容なのだ。

 CCIEは筆記試験と実機操作によるラボ試験の2つで構成され、シスコ社員でも「プライベートも仕事も考慮して時間を作らないと取得できない」(財津氏)といわれるほど難関の資格。その代わり、資格取得後は、「アプリケーションからネットワークまでの幅広い知識に精通したネットワークエンジニア」というユニファイドコミュニケーションのエキスパートとして活躍できる保証になる。

 「現在当社には、ファンデーション/アドバンスドテクノロジー以外に、新規事業として期待できる技術群『エマージングテクノロジー』という分野もあります。いずれにせよ、ネットワークとアプリケーションの融合が進むにつれ、ネットワークエンジニアにはこれまで以上に“総合力”が求められるはず。その総合力を付ける意味でも、CCIE取得は意義があるのではないでしょうか」と財津氏は語る。


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