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第10回 業界に革新を起こせるSaaSエンジニアになれ!

売上規模が「2010年に1.5兆円強」とも予測されるインターネットのアプリケーションサービス市場。中でも、「自前」が当たり前だった企業システムの在り方を根幹からくつがえすSaaS分野への関心が高い。「ゼロからシステムを開発する」「パッケージを導入する」という時代を経て、目覚ましい伸びを続けるSaaSによって、ITエンジニアに必要なスキルはどのように変わるのか。セールスフォース・ドットコム の榎氏に聞いた。

    高い成長率を誇るSaaS市場

 ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム(ASPIC)は、インターネットを通じたアプリケーションサービスの市場規模は、2010年に1.5兆円強に拡大すると予測している。ここでいうアプリケーションサービス市場には、セキュリティ・ホスティングやデータセンター、ブログや動画コンテンツサービスも含んでいる。個人・企業を問わず「インターネットで、さまざまなサービスを利用する」という形態がさらに加速するという予想を示しているわけだ。

セールスフォース・ドットコム
執行役員 プロダクトマーケティング
榎隆司氏

 ネットサービス全体で見ると、通信インフラの発達やITリテラシーの向上、IT製品の低価格化など、さまざまな要因が成長を後押ししているといえる。その中でも注目すべきは、「企業アプリケーションをネット経由で提供する」というSaaS(Software as a Service)分野だろう。その理由は、SaaSにより企業システムの在り方や構築手段、システム開発(SI)企業のビジネスが大きく変化するからだ。

 国内外のSaaS市場を切り開いてきた米salesforce.comの日本法人であるセールスフォース・ドットコムは、2007年2月、ASPICより「ASP・ITアウトソーシングアワード2006」グランプリを受賞している。セールスフォース・ドットコム 執行役員 プロダクトマーケティング 榎隆司氏は「ワールドワイド全体で、当社の売上額は年間150%の成長をしています。企業のパフォーマンスとしても、Googleに次いで成長が速いITベンダとして認知されています。現在、全世界で110万を超えるユーザーがSalesforceを使っていますが、ユーザー数が増加してもパフォーマンスはまったく落ちることなく、220〜250ミリセカンドという高速処理を実現しています」という。

    SaaSの成長によってITエンジニアの価値が変わる

 こうした状況が、今後のITエンジニアのキャリアにどのような影響を及ぼすのか。ITスキル、そしてビジネススキルの両面から考えていこう。

 そもそも、かつていわれていたASP(Application Service Provider)とSaaSはどのように違うのか。共通しているのは「マルチテナント」という概念だ。これは「すべてのユーザーに対し、1つのサーバ上でアプリケーションを提供・サポートする」というもの。集合住宅という1つの「箱」で複数の人々が生活を営むように、シングルインスタンスで複数の企業がさまざまな用途でアプリケーションを使うというイメージだ。

 集合住宅と異なるのは、「増え続けるユーザーのために、スケーラビリティを確保する」「それぞれの企業がニーズに合わせ、自由にカスタマイズできる」という点だろう。前者に関しては、セールスフォース・ドットコム自身がまだ「ASP」と名乗っていたころからインフラ設計に注力し、そのノウハウは「他社の追随を許しません」(榎氏)というほど強固なものとなっている。そしてASPとSaaSの違いを決定付けるのが、後者の「カスタマイズの可否」という点だ。

 「企業がSaaSに期待するのは、初期コストや開発期間を抑えられるという点です。そのうえで実際の運用で問題となるのは、『この機能をこのように使いたい』というニーズ。コストや開発工数削減を考えれば、カスタマイズに関しても、基本的にはユーザー自身で行えるようにするのがベストです。そこで当社は、最初のバージョンをリリースしてから2年を経て、カスタマイズ可能なSaaSアプリケーションを市場に提供しました」と榎氏は語る。

 セールスフォース・ドットコムが提供するプラットフォームは、一般的なアプリケーションと同様に「インフラ層」「データベース層」「ロジック層」「ユーザーインターフェイス層」のような階層構造となっている。特に「Logic as a Service」と呼ばれるロジック層は、Javaライクな独自コードで記述され、カスタマイズしたロジックをWeb上にアップする仕組みが備わっているのだという。こうして提供される各種機能サービスを「開発する」側、「利用する」側のITエンジニアが、今後も増加していくと見られる。

 サーバを含めたプラットフォーム全体の設計は米本社の開発チームが担当している。もちろん安定性を確保するため、各ユーザーの最大稼働率を見越して設計されており、利用側からすると「システムの冗長性によるコスト高」を回避するメリットもある。つまり、ASPが「初期コストと開発工数低減」という価値を提供するものだったとすれば、SaaSは「カスタマイズや運用も含め、ITコストと開発工数低減に貢献する」という価値を生み出すものなのだ。

 以上を踏まえると、SaaS時代のITエンジニアには、Javaなど既存技術をベースとして「サービスを開発・利用する」という企画力が必要となる。当然、開発・利用ということになれば、WebサービスAPIに関する知識も重要だ。

 「導入前後の技術サポートとして、『基幹システムとどのように連携させるか』は最も重要な部分です。そのため、SIビジネスとして見ると、米国で開発したプラットフォームを用いて、『顧客企業のシステムとどのように連携するか』『それによって、何ができるか』という提案が重要となります。そこに従来とは異なるSIとしての価値が生まれると考えています」(榎氏)

    SaaSエンジニアに必要なのは「イノベーションを起こすこと」

 SaaSという新たなソリューションを前に、「サービスを開発するITエンジニア」「利用するITエンジニア」にとどまっていては、大きな価値は生み出せない――。榎氏は、「だからこそ、いままで以上に必要なのが、プロジェクトマネージャなのではないでしょうか」という。

 従来、プロジェクトマネージャといえば、顧客の希望をヒアリングして要件を定義し、定まった要件を基にプロジェクトの進行・予算・スタッフを管理する役目だった。しかし、SaaSの普及が進んでくると、ゼロから要件を定義するのではなく「現存するWebサービスをどのように選択するか」「選択したものをどのように組み合わせるか」「それによって、どんなニーズを満たせるのか」を提案できるプロジェクトマネージャが必要になる。

 このように、「従来のSIノウハウとは違う」という前提で、自身の技術スキルやビジネススキルを高めていくことが重要だという。榎氏は、ITエンジニアのこうしたスキル変化や、従来のSIビジネスとは違う価値提供が台頭することを踏まえ「ビジネスのイノベーションを起こせるかどうかが鍵」という。

 「ビジネスのイノベーション」は、決して大げさな話ではない。それを裏付ける流れとして、昨今話題となっている「クラウドコンピューティング」がある。明確な定義が難しいが、インターネットという雲(クラウド)の向こうにある世界でさまざまなデータが処理され、その結果を雲のこちら側で「使う」というIT技術の在り方や必要技術を一括して呼ぶ言葉とされている。

 インターネットの「向こう」の世界を築いてきたセールスフォース・ドットコムは、今後もこうした波をつくっていく企業だ。Web黎明期が「サイトを開いて集客する時代」、Web 2.0が「ユーザー参加・主導の時代」だとすれば、次に来るのは「Webサービスを提供するプラットフォーム自体がオンデマンドになる時代」。同社では、これまで提供してきたSaaSアプリケーションのSalesforceとそのプラットフォームを「Platform as a Service」とし、この2つを組み合わせたものが「クラウドコンピューティングになるのではないか」(榎氏)としている。

 これからのITエンジニアにとっては、「雲」の中にどんなサービスがあり、どんなプラットフォームでどのように提供されていくか、それらを組み合わせることで何が変わるかを見極められる目が必要になるだろう。「ITエンジニアが提供する付加価値も変わってくると思いますし、そもそもIT企業の営業担当者自身が、『製品を売る』ことから『サービスを組み合わせた提案をする』というように変わってくるでしょう。こうした変化に対応し、成功できるのが『SaaSエンジニア』なのではないでしょうか」と、榎氏はSaaS時代のエンジニアの未来を語った。


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