月間3億PV、ユニークユーザー約700万人を抱える巨大サイト「クックパッド」。この大規模サイトを運営・開発するエンジニアに求められるのは「徹底したユーザー視点」である。ユーザーの立場に身を置いてサービスの開発ができるかどうか。その基本を守ることで初めて、技術力を生かせるとクックパッド株式会社は考えている。今回はクックパッドから次世代を担うWebエンジニアのあるべき姿を探る。 |
700万人に支持を受けるクックパッドの強みは 「徹底したユーザー視点」 |
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30代女性の4人に1人が、日々閲覧しているレシピサイト。それが世界最大級のレシピ投稿サイトであるクックパッドだ。
登録されているレシピ数は、2009年9月現在60万強。すべて読者からの投稿によるレシピ集で、家庭料理を中心に、中にはプロ顔負けの本格的なメニューまで、ありとあらゆるジャンルの料理法が掲載されている。レシピを見て実際に作った読者は「つくれぽ」という形で、写真と共に食べた感想や作り方の工夫などをフィードバックする。ユーザーは、読者であると同時に投稿者でもある。つまり、自分たちの目線で“サイト作り”をしているわけだ。そのため、クックパッド社では、投稿・検索時の使いやすさはもちろん、アクセス数が増大する夕方の稼働にも耐え得る磐石なシステム構築を心掛けている。「すべてはユーザーの料理を楽しくするため」という意識、これこそがクックパッドの最大の強みだ。
以下、同社が約700万人のユーザーを満足させるために、どのようにテクノロジを活用し開発を進めているのかを紐解いていく。
迅速な開発をするためにたどり着いたRuby on Rails | ||
クックパッドが、Ruby on Railsを活用した国内最大級のWebサイトであることは有名だ。同社がRuby on Railsを採用する理由は、「迅速な開発」をするためである。迅速な開発は、クックパッド社のITエンジニアが最も大切する「ユーザー視点」を徹底するためのキーポイントだ。
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同社 技術部 最高技術責任者の橋本健太氏は、「“いい”と思って作った機能であっても、実際に使ってみると、ユーザーのニーズや利用方法とかい離していることが必ずある」と述べる。だからこそ、「作って、壊して」というサイクルを何度も何度も回していかなければ、ユーザーにとって本当に価値あるサービスは実現できない。
その点、Ruby on Railsは、迅速な開発スピードに応えるフレームワークである。そのうえ、「同じことを繰り返さない」を始め、規約やポリシーがきっちり定められており、ルールに則って開発すれば、生産性の向上やメンテナンス性は保証される。
1998年の最初のサイトリリース時には、当時主流だった別のフレームワークを使って開発をしていた。しかし、ユーザーにとって価値の高いサービスを作っていこうとすると、そのフレームワークでは迅速な開発に対応しきれなかった。同社は開発言語として新たにRubyを採択し、2008年にはWebサイト構築の基盤をRuby on Railsで整備した。Rubyの専門エンジニアがほとんどいない中で、データ構造やテーブル名などの変更、ロジックを含むすべてのコードを一から書き直した。その結果、Ruby on Railsを使用してからは、開発生産性が10倍以上向上したという。
ユーザー視点に立った迅速な開発への取り組みはテクノロジ面だけではない。開発チームの構成にも工夫をこらした。クックパッド社では、ユーザーニーズを属性や行動パターンで細分化し、それぞれの課題を解決するためのプロジェクトを作って、チーム単位で開発に臨んでいる。簡単にいえば、開発チームを対象のユーザーごとに作るのである。例えば「ユーザーが今日食べたいもののレシピを見つけるためのチーム」では、レシピ検索について改善を繰り返す。また、開発チームは少人数(例えばディレクター1人とITエンジニア2人)で構成し、ユーザーの反応に迅速に対応できる体制を整えている。
次世代のWebエンジニアに求められるのは ユーザーのために「技術を価値に変える力」 |
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徹底したユーザー視点を持ち続けられるITエンジニアとは、どういう人たちなのか。クックパッド社が求めるITエンジニアから次世代のWebエンジニア像を探る。
「われわれは、『世界で一番生活の役に立つサービスを作っているITエンジニア』というプライドを持っています。弊社のITエンジニアには、『人々の生活を豊かにしたい』という思いがあることが不可欠です」(橋本氏)。そのうえで、「作って、公開して、一般ユーザーからの評価を得て、改善する」ということに喜びを見出せるITエンジニアであれば、同社の仕事には向いている。
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クックパッド社のITエンジニアには自分の強みを明確に持ちつつも、素直な人が多いという。ユーザーの意見から真意を汲み取り、ITエンジニアとしてのプロ意識を持って、より良いサービスを迅速に開発すること。そのために、新しい技術を積極的に受け入れると共に、ユーザーのためにクックパッドのサービスがどうあるべきかを考える。同社人事部 採用担当の鷲見美緒氏は「技術開発は、モノ作りという点で、料理と似ているところがある。料理と同じで、“相手を喜ばせる”という視点でサービスを企画・開発していく文化が、クックパッド社の社風」と述べる。
さまざまな職種がある中で、ITエンジニアは最もダイレクトに世の中を変革し、「人を幸せにする」ことを実感できる職種だといえるだろう。橋本氏はITエンジニアを「自分の力で、自分の住みたい世界を作っていける人種」と表現する。技術を価値に変え、人々を幸せにするという視点でモノづくりができること、これこそが今後Webエンジニアとして生き残っていくためのヒントなのかもしれない。
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提供:マイナビ転職
企画:アイティメディア営業本部
制作:@IT自分戦略研究所編集部
掲載内容有効期限:2009年10月31日
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