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第16回 「顧客視点」を身に付け、ITコンサルタントへの転身を目指せ

2008年10月、@IT自分戦略研究所とJOB@ITが合同で行った読者調査で、人気職種の上位に挙げられたITコンサルタント。その一方で、「上流工程の経験がない」「現勤務先が大手SI企業ではない」という理由で、ITコンサルタントへのキャリアをあきらめるITエンジニアも多い。ITコンサルタントへの道は、一部の限られたITエンジニアのものでしかないのか。逆境といえる状況から、ITコンサルタントへ転身するにはどうすればいいかを考える。

  ITコンサルタントは本当に「狭き門」なのか

 ITエンジニアの人気職種である「ITコンサルタント」。その人気の高さに比例するように、「ITコンサルタントへの転身は狭き門」という意見も多く見受けられる。国内には多くのコンサルティング企業があるにもかかわらず、なぜITコンサルタントは「狭き門」なのか。

 理由の1つに、「ITコンサルタントは仕事の内容が幅広く、求められる知識量が多い」ということが挙げられるだろう。戦略系・会計系・IT系、各企業で特徴の差こそあれ、コンサルティングの現場では、「市場分析・財務・営業・生産・人事・教育・IT」など企業活動すべての要素がからんでくる。実際、多くのコンサルティング企業が「企業活動に必要な要素すべてを総合し、顧客の視点でソリューションを提供する」としている。

 しかし、ビジネスにITが不可欠となった今日、ITエンジニアがこれまでに培ったスキルを武器に、ITコンサルタントに転身できるチャンスは決して少なくはない。

 「分野の幅広さ」と「顧客視点」が、コンサルティング業務を理解するうえでの重要なポイントだ。例えば、一般の大手SI企業におけるITコンサルタントと、コンサルティング企業のそれとは何が異なるのか。

 この問いに対し、IT系コンサルティング企業であるウルシステムズ コンサルティング第1事業部 事業部長の林浩一氏は、「ビジネスを支えるITをどう作るか――ITの企画の立て方、ベンダ管理、1つ1つのプロジェクトマネジメント、技術の標準化など、星の数ほどあるIT課題を解決するのが当社のミッション」としたうえで、次のように説明する。

ウルシステムズ
コンサルティング第1事業部
事業部長 林浩一氏

 「当社のコンサルティングの特徴は2つあります。1つは、ビジネスとITの間のギャップを埋めること。具体的には、経営層が求めるゴールを徹底して周知させること、業務知識をIT側に正しく伝えること、プロジェクトを遂行すること、そしてITスキルを向上させることです。もう1つは、顧客視点を持つこと。一般にSI企業は『開発を受注し請け負う』、顧客企業は『開発を発注し管理する』という立場で、必ずしも利害が一致しません。ITコンサルタントには、常に顧客の立場でものを考えることが求められます。例えば当社の場合、顧客側の情報システム部門の立場でSI企業と交渉に当たり、複数のベンダ管理を行うというケースも多いですし、顧客の業務部門や経営層との調整に当たることもあるのです。そのためITコンサルタントは、ITに関する技術力はもちろん、交渉力の面でも、一般のSI企業や一般企業の情報システム部門のトップレベルの相手と互角に渡り合えるだけのスキルを備えていなければなりません」(林氏)

 このように、SIベンダとコンサルティング企業では、立ち位置も仕事の内容もまったく異なる。この点を踏まえ、「どのようなITコンサルタントになりたいのか」を再度自分に問いかけてみよう。

  ITコンサルタントに必要な4つのスキルセット

 ITコンサルタントに求められるスキルとは何か。アビーム コンサルティング プロセス&テクノロジー事業部 インダストリー ソリューションズ セクターリーダーでプリンシパルの田口陽一氏は「大きく4つあると考えています」という。

アビーム コンサルティング
プロセス&テクノロジー事業部
インダストリー ソリューションズ
セクターリーダー
プリンシパル 田口陽一氏

 第1に「ビジネススキル」。会計など全業種共通で適用できる業務知識と、業種ごとに特化した知識の2つからなる。第2に「ITの知見」。システム構築プロジェクトを実現していくために必要なIT知識やスキルのことで、詳細は後述しよう。第3に「マネジメントスキル」。プロジェクトマネジメントとほぼ同義であり、チームで課題解決をするに当たって必要なコミュニケーションスキルや管理スキルなどが含まれる。最後に「コンサルティングスキル」。コンサルティングに必要な論理力、ファシリテーションなど、コンサルタントにとってベーシックなスキルだ。

 ITコンサルタントも、得手不得手の差はあるが、まず上記4分野のスキルをバランス良く伸ばし、その後個々の得意分野を確立していくスタイルが一般的だという。「各スキルを立体化し、自分ができる分野を塗りつぶしたとき、塗った範囲が大きければ大きいほど、ITコンサルタントとして卓越したスキルを持っているといえます」(田口氏)。ウルシステムズの林氏も同様の意見だ。

  理想論だけではダメ。コンサルタントになれる資質とは?

 では、ITコンサルタントに必要な資質とは何だろうか。田口氏は、「コミュニケーション能力、論理思考能力は基本ですが、大切なのは顧客が何を求めているか理解できる想像力があるかどうか。別の面からいえば、顧客視点に切り替えて物事を考えられるか、そのような志向性を持っているかが重要です」という。

 ウルシステムズの林氏も、「自分の技術や考えに絶対の自信を持つ頑固な方、人と話すのがおっくうという方は、コンサルティングには向いていないのでは」と同意見だ。さらに、「利益追求の論理を理解するビジネスセンスも重要な資質です」(林氏)という。「ユーザーにとって最高に使いやすく現場が本当に喜んでくれるシステム」を作ることは必ずしも求められない。経営層が望んでいる効果として、「コスト削減」が現場の「利便性向上」より優先されるケースは多いのだという。機能的・性能的に優れたシステムの方が良いのはもちろんだが、1つの案件にはさまざまな利害を持つステークホルダーが存在し、全体は「コスト」という枠でしばられている。「利益追求というビジネス上の論理を踏まえ、制約の中で顧客の期待を上回る提案ができるかどうかは、ビジネスセンスという資質が作用します。理想論だけでは通用しません」(林氏)と厳しい意見を述べる。

 どのように「上を行く提案」を考えるのか。そのポイントが、田口氏、林氏が口をそろえる「顧客視点」である。「顧客視点で物事を論理的に考えられるかどうか。それがITコンサルタントに求められる『地頭の良さ』です」と田口氏はいう。

  現在の職場でコンサルティングの「実績」を作る方法

 ここまで読んで、「そんなに多くの知識は身に付かない」「上流工程の未経験者が、どうやってスキルアップできるのか」と嘆く読者もいるだろう。

 実はITコンサルタントを目指すに当たり、上流工程の経験の有無はそれほど重要ではない。例えば田口氏は、まずは現在の仕事において「技術に関する知見」を深めていくことが重要だと語る。なぜなら、それこそがITエンジニアがITコンサルタントに転身する際の強みだからだ。「1つの技術の表層を見るだけではなく、深堀りしていけば、物事の本質が見えてきます。そうなればほかの技術の理解や習得にも応用がききますし、必要な論理思考能力なども磨かれます。また、日常の仕事を通じ、自分の担当している業界や業務を知ることも可能なので、そうした知識をいかに体系化して、自分の糧にするかに注力すべきでしょう」という。

 田口氏は、このように総合的なITの知識を「技術に関する知見」と呼んでおり、ITコンサルタントに必要なスキルの1つに挙げている。林氏も、これとまったく同じ意味・用語を使い、「一定以上の深さ・広さを持つ技術知識を擁している方は、ITコンサルタントに必要なスキルや資質もおのずと伸びているはずです」(林氏)という。

 ファシリテーションスキルや問題解決能力を磨くためには、林氏はこんな方法を挙げる。業務の中で、「新しいやり方で、もっと効率的に仕事を進められるのでは」などの解決すべき問題点を見つけ、自分なりのやり方を考え、工夫し、同僚や上司に提案して改善するのだ。「コンサルティングに必要なスキルアップにつながるはず。上流工程の経験の有無や資格より、自ら考え行動してきた実績の方を評価します」(林氏)という。そして2人とも、「『できない』『いわれたことだけやる』というのではなく、『どうすればできるか』を考え、仕事に取り組むことが、ITコンサルタントへの一歩になる」と口をそろえる。

 現勤務先が2次請け・3次請けというのも、ITコンサルタントを目指すうえでプラスに働くことがある。なぜなら、「大手SI企業より、実際にシステム開発に携わっている2次請け・3次請け企業のITエンジニアの方が、技術スキルや知見を磨けるから」(林氏)だ。自分の強みを磨くうえで、むしろ有利な環境なのだ。

 フリーエンジニアも同様だ。「なぜフリーという道を選択したのか。どのような仕事から何を得たのか。いまなぜコンサルティングを希望するのか。これらを論理的に述べられればいいのです。フリーという道が、キャリアアップの障壁になることはありません」(田口氏)。

 コンサルティングのだいご味は、顧客と向き合い、チームで物事を解決・実現していくプロセスにあるという。そこへ通じる道は、決して狭くはない。踏み出すチャンスは、すべてのITエンジニアにある。

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