グーグルはいまやインターネット業界の枠を超え、世界中から注目を集める企業である。そんな世界企業グーグルで製品開発を担当するプロダクト マネージャー 鈴木宏輔氏から、次々に画期的なサービスを生み出す秘けつを聞いた。 |
技術・マーケ・PR間の“ハブ”として ――グーグル プロダクト マネージャーの仕事 |
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1998年、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの2人の手によってインターネットの世界に登場したグーグル。わずか10年でIT企業のトップレベルにまで昇り詰め、「次はどんな世界を見せてくれるのか」と世界が注目する企業である。そんな世界企業グーグルで、画期的なサービスを生み出す製品開発を担っているのが「プロダクト マネージャー」である。具体的にどのような仕事なのだろうか。
グーグル日本法人のプロダクト マネージャー 鈴木宏輔氏 |
グーグル日本法人のプロダクト マネージャー 鈴木宏輔氏は、検索サービス全般の企画を担当している。大学卒業後に大手電機メーカーに入社し、研究開発や社内ベンチャーの立ち上げに携わった。その後、米国でMBAを取得してコンサルティング会社に勤務し、昨年グーグル日本法人にプロダクト マネージャーとして入社した。
プロダクト マネージャーとは、一般企業でいえば商品企画担当者のことだ。世界各地および国内で開発された新機能を国内展開していく役割を担う。英語でのコミュニケーションは必須だ。「日本のユーザーのニーズに合わせて、技術チームとは新機能の開発からリリース、マーケティング・PRチームとはコミュニケーションプランの策定、さらにリーガルチームとはリーガル面の検討など、各チームのハブとなってドライブしていく業務を行います」(鈴木氏)。
もちろん、日本独自の機能を企画し、リリースしているケースも多くある。有名なものに、検索キーワードの「急上昇ワード」の表示がある。いまや一般的なサービスとして認知されているが、これはもともと日本が始めたものだという。また、日本語入力システムがオフになっていても、入力されたアルファベットから日本語の単語を類推し検索結果を表示する「Googleサジェストのローマ字検索機能」も、日本独自の機能の1つだ。ユーザーがいつの間にか当たり前に受け入れ、使いこなすことのできる便利なサービスが日々開発されている。それが検索システムのプロダクト マネージャーの企画力であり、その機能を実装するITエンジニアの腕なのである。
他社の商品企画とは異なるグーグルならではの特徴3点 | ||
鈴木氏によると、グーグルのプロダクト マネージャーの仕事には、一般的な商品企画と異なる点が3つあるという。
第一に、多くの日本企業では、リリースの決定判断を下すのは商品企画担当者の上にいる事業部長であることが多いが、グーグルの場合、鈴木氏のようなプロダクトマネージャーに一任されているということ。もちろん、米国本社側の了解を得る必要はあるが、一般的な企業の商品企画担当者に比べると裁量は大きい。
第二に、競合調査よりもユーザー調査に重きを置いているということ。例えば鈴木氏が以前勤務していた電機メーカーでは、新しい製品を開発する際は競合他社の製品スペックを参考に、機能追加・拡張のプランを立てることが多かったが、グーグルでは徹底したユーザー調査の下、改良プランを立てていく。
第三に、製品リリースのスピードが速いこと。家電製品や、ソフトウェアのパッケージ製品の場合、完成してからユーザーの手元に届くまでタイムラグが生じるが、グーグルの場合は、機能ができ上がったら即リリースが可能だ。時には、マーケティングの観点から“満を持して”発表することもあるが、一般的な企業に比べるとリードタイムは格段に短い。このスピード感が一般ユーザーに「グーグルは、次々と面白いことをやっている」と感じさせているのだ。
グーグル社員の根底にある「問題解決力」 | ||
そんなプロダクト マネージャーに求められるスキルとは何か。ベーシックなビジネススキルでいえば、英語でのコミュニケーション力と、ビジネスの現場で出てきた数値を分析・判断できる力が求められる。「最終的に、米本社側に新機能リリースの是非を問うとき、なぜ必要なのかを論理的に説明しなくてはなりません。そのため、企画段階から数値に基づいて客観的に考える力が必要なのです」と鈴木氏は語る。また、「マーケティングやPR、技術チーム間のハブとなって動くため、ITエンジニアの発言を理解できる程度のソフトウェア技術に関する知識は必要です。さらに、ビジネス用語の一般常識は備えておいた方がいいですね」(鈴木氏)とのことだ。
もう1つは、問題発見・解決力である。これはプロダクト マネージャーだけでなくグーグル全社員に共通して求められる能力だ。サービス改善のためのユーザー調査において、ただ見ているだけのITエンジニアと、問題点に気付き解決策を見出そうとするITエンジニアとでは、視点や心構えは大きく異なる。グーグルには後者のITエンジニアが多い。このことが、世界的に評価されるサービスを作り出す原動力となっている。そのため、採用面接でも、志望動機や自己プレゼン能力だけではなく、「問題を発見し、取り組む力がどれだけあるか」を見ることが多いという。「勤務時間の8割は業務に直接関係のある仕事をし、残り2割は自由に発想をするための時間」とする有名な「20%ルール」が生きているのも、問題発見・解決力に優れた社員が集まっているからだ。
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グーグルが目指すのは、「世界中の情報を、誰もがどこからでも使えるようになる」世界。それを実現するのは、技術を生み出すITエンジニアであり、彼らの技術力をもって「ユーザーに使いやすい」サービスを企画するプロダクト マネージャーである。
「2010年も、引き続き画期的な機能のリリースをしていく」という鈴木氏。「新しいインターネットの世界を切り開く」――グーグルのプロダクト マネージャーとは、そういう気概を持っている人たちなのだ。
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提供:マイナビ転職
企画:アイティメディア営業本部
制作:@IT自分戦略研究所編集部
掲載内容有効期限:2009年11月30日
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