マイナビ転職×@IT自分戦略研究所
「ITエンジニアの職務経歴書・徹底指導!」
第1回 マネージャ志向の緻密派SEが書いた「細かいだけのダラダラ経歴書」を斬る!
人事経験のあるベテラン・キャリアカウンセラーの髭 彰さんが、転職を希望しているエンジニアの職務経歴書を添削。“書類選考の通過に必要なのは、 「動機」「能力」「人柄」の3要素”という独自メソッドで、転職希望者の職務経歴を徹底指導します。 |
今回の転職希望者: 外資系SI企業のSE→グローバル企業でのマネージャ職 |
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【今回の転職希望者】 高梨実さん(仮名):29歳 外資系SIグループの企業に常駐 (2003年〜2012年) 【現在】 外資系の大手SIグループ企業に常駐するシステムエンジニア。6年間、マイクロソフト製品に特化したソリューションに携わる。プロジェクトリーダー経験あり。 ↓ 【転職希望先】 グローバル企業でのマネージャ職(マイクロソフト、アクセンチュアなど) |
高梨実(仮名)さんは、地方の情報系専門学校を出て、2003年に東京の中堅SI企業に就職したエンジニアだ。入社当初はプログラマからスタートし、その後、顧客先である、外資系の大手SIグループ企業に常駐している。エンジニア歴9年目で、プロジェクトリーダーも経験した。
「今年中に転職したい」という高梨さんは、外資系に常駐している経験を生かし、グローバル企業への転職を目指している。
そんな彼の職務経歴書には、書類選考を通るようなアピールがしっかり書いてあるだろうか?
●書類選考通過に必要な3つの要素
“書類選考の通過に必要なのは、 「動機」「能力」「人柄」の3要素である”――。IT企業での人事経験もあるベテラン・キャリアカウンセラー 髭彰(ひげ あきら)さんが、「書類選考通過に必要な3つの要素」という独自メソッドで、エンジニアの職務経歴書を徹底指導する。
書類選考通過に必要な3つの要素
なお、このメソッドは面接時にも応用が可能なので、
面接にまで進んでいるエンジニアも、ぜひ参考にしていただきたい。
動機: 「どんな仕事をしたいか」という“意欲”が見えない | ||
髭:最初に率直に申し上げますと、高梨さんの職務経歴書は非常に長く、緩急がついていないので、職務経歴書を通過するために必要な3つのポイント、「動機」「能力」「人柄」が見えてきません。
そこで、まずは高梨さんの「動機」「能力」「人柄」について、1つずつアピール要素を明らかにしていきましょう。
まずは 「動機」です。職務経歴書で「動機」をアピールするためには、「こんなことにチャレンジしたい」という“意欲”、「いずれはこうありたい」という“目的”を明確にする必要があります。、高梨さんは今後、どのような仕事がしたいと考えていますか。
高梨:6年間、マイクロソフト製品に特化したソリューションに携わり、専門知識を養ってきました。その専門知識を武器として、さらなる自己向上に励みたいです。また、今までに経験したことがない業種の仕事や、もっと大規模な仕事を成功させたいというチャレンジ精神もあります。そのために、チャレンジできる環境に移りたいと思っています。今、外資系の企業で働いている経験を生かしたいので、アクセンチュアやマイクロソフトなどのグローバル企業を希望しています。
髭:なるほど。残念ながら、その“意欲”は、今の経歴書からは読み取れませんね。
高梨:そうですね……。
髭:“意欲”は、“行動力”で表現します。チャレンジ精神や勉強意欲の証明として、「実際に今まで何をしてきたか」という行動の実績を見せるのです。
●人とは違う“行動力の実績”を挙げる
髭彰(ひげ あきら)さん
髭:そういった行動の実績で、具体的に挙げられるものはありますか?
高梨:マイクロソフト系の資格は持っていませんが、実務で得た力はあると思います。
髭:それだけでは人と同じで、アピールになりにくいですね。「人よりも速いスピードで学んだ」「他の人が容易にできないことを実現した」ことはありますか。
高梨:他の人ができないことで言えば、プログラム開発の腕を買われて、あるID実装の案件でプロダクトリーダーを任されたことがあります。他のメンバーが分からない知識を、自分は持っていたからです。
髭:なるほど、それは非常に良いアピールポイントです。高梨さんには“意欲”があり、人よりも速いスピードで優れた技術や知識を身に付けて、実際に評価された、という証明になるからです。こういったポイントは、どんどんアピールして ください。最初の「要約」の部分に書くと良いでしょう。
●自分の5年後を、具体的に考えているか?
髭: 次は、高梨さんの“目的”を探ります。“目的”とはつまり、「自分の5年後の目的を見据えているか」「目的を実現する方法まで考えているか?」という“思考力”を示すことでもあります。高梨さんは、ご自身の5年後について、具体的に思い描いていますか?
高梨:5年後について具体的な考えはありませんが、ITの技術にはずっと関わっていたいと思います。ただ、ずっと技術の前線で働くイメージはなく、むしろマネージャや、人を育てる側になりたいと思います。
髭:なぜ、ITに関わっていたいと思うのですか?
高梨:ITが好きだからですね。
髭:それはとても重要な思いです。マネージャになるなら、ITだけではなく、人も好きになる必要がありますね。
高梨:人も好きです。人に喜んでもらいたいという意識は常に持っています。
髭:何か、それを裏付ける事実はありますか?
高梨:後輩が技術的に困っていたらまずWebで検索し、役に立つ技術サイトを見つけて教えるなど、後輩の面倒見は良い方です。
髭:なるほど。プロジェクトリーダーをやっていた頃は、チーム内でもかなり目配りをしてきたのでしょうね。
高梨:そうですね。かなりたくさんの相談に乗りました。
髭:分かりました。「動機」についてまとめましょう。高梨さんはITが好きで、技術を向上させようという“意欲”がある。さらに、これから幅広い知識やマネジメント経験を得て、マネージャになりたいという“目的”もある。これらの「動機」を基に、より適した環境へ行きたい、ということですね。
能力: 職歴には緩急をつけて、“実績”をしっかりアピール | ||
髭:次に、「能力」を見ていきます。「能力」を示すには、これまでの具体的な“実績”と、どれだけ成長し、“知識”を積んできたか、という2点がポイントです。
高梨さんの職務経歴書を見ると、定量的なものがほとんどありませんね。年月とポジションのみで、人月も入ってないから、どういう実績を残したのかが、まったく分かりません。
高梨:人月などの情報は、得られなかったので……。
髭:正確なものでなくても構わないので、見積もって書いておきましょう。また、高梨さんはすべてのプロジェクトを羅列して 書いていますが、これでは長すぎて、人事担当者の目に留まりません。短いプロジェクトは、まとめてしまっていいでしょう。
高梨:職歴に、緩急をつけるということですか。
髭:そうです。これから狙うのがマネージャ・ポジションなら、詳細設計・開発実績は軽めに書きましょう。その代わり、リーダー経験や上流工程経験は重点的に書く必要があります。
●“実績”=「プロジェクトにどんな成果を出したか」
髭:“実績”とは、自分が関わったプロジェクトに「どういう成果を残したか」ということです。連携強化、後輩の育成、ミスの削減、納期短縮……何でもいいですが、自分が関わったことにより、プロジェクトにこのような良い成果を残した、ということを書くのです。
そのためにも、ご自身の「プロジェクト経歴」に「成果/成長」という項目を追加してください。高梨さんのアピールポイントはプロジェクトリーダー経験時にあるので、ここでしっかりその時の経験をアピールしましょう。具体的に、どのような実績を残しましたか?
高梨:私は発注側にいたため、ベンダに要求する立場でした。ベンダ側の要求と発注側の要求、どちらも理解できるので、板ばさみになりながらも落としどころを探して、プロジェクトを成功させました。
髭:「両方の立場が分かる」「ベンダ側の要求をうまくお客さんに伝えられる」というのは、大きな強みです。その交渉力によって話を決着させた、という“実績”はアピールポイントになりますね。
●堂々と自分を褒める
髭:“知識”とは、試練を乗り越えた末に手に入れる「伸びる力」です。成長できる力、といってもいいでしょう。高梨さんが、最も成長した経験は何ですか?
高梨:やはり、先ほどのプロジェクトリーダーの経験ですね。かなり肉体的、精神的に追い込まれながらも、プロジェクトを成功させました。
髭:具体的には?
高梨:仕様変更が発生し、ベンダ側は「追加料金が必要」と言ってきました。しかし、すでに予算は決まっていたので、リリースまでに可能な機能で納品し、後は運用でカバーするという形で、常駐先のお客さんに納得してもらいました。両者の意見が拮抗していて動かなかったため、1カ月ほどは毎日、地方にあるベンダに通い込み、体力的にも厳しい中での成果でした。
髭:相当、悩んだということですね。解決のアイデアはどうやって出しましたか?
高梨:双方の意見をよく聞き、自分で方向性をまとめた上で、上司に承認をもらいました。このアイデアを打診したところ、ベンダとお客さん双方に納得してもらえました。
髭:「自分がアイデアを出し、厳しい状況を切り抜けた」というのが、素晴らしいアピールポイントです。大変な経験により、高梨さんは「自分のアイデアによって、プロジェクトを成功に導く力」を得て成長しました。この経験は最も重要なアピールポイントになるはずです。
人柄: 「コミュニケーション能力が高い」では弱い | ||
書類選考通過に必要な3つの要素
髭:最後に「人柄」を確認しましょう。人柄はその人自身個性ともいえる“強み”、そして“対人能力”で決まります。
高梨さんはまさに自己PR欄に「コミュニケーション能力が高い」 と書いていますが、この根拠を教えていただけますか。
高梨:先輩・後輩から「高梨はコミュニケーションがきちんとできる」とよく言われます。
髭:それだけでは曖昧ですね。具体的に、どういう場面で言われるのでしょうか。
高梨:例えば誰かから要望を聞く際には、相手が本当に思っていることは何なのかと、掘り下げて追求します。最初の要求を言葉をどおりに受け取って行動してしまうと、「本当に求めていたものは違った」ということがよくあるからです。なので、認識のずれをなくすために「こういうことでいいのか」と常に確認しながら、話を進めるよう にしています。
髭:なるほど。相手を主体に置いて話を聞く能力を持っているということですね。どこかで勉強したわけではなく、自然とそうしているのですか。
高梨:そうですね。
髭:これは、マネージャにとって最高の能力、対人能力が高いということです。
高梨:そうなんですか……。
髭:そうです。この点は、もっと強く自己PR欄に書いてください。ミスコミュニケーションはプロジェクト推進上の大きな問題となりますから、「対人能力」が高いことは、人事が注目すると思います。もっと強調していいでしょう。具体的なエピソードを入れつつ「この対人能力を生かし、業務を円滑に進めている 」とアピールしましょう。高梨さんの場合、強み=対人能力なので、ここはシンプルにまとまりましたね。
髭さんの履歴書添削・まとめ | ||
●しっかり書いてあるが強弱がない、「緻密派」の職歴書
高梨さんは、初めて書いたとは思えないほど、きちんとした経歴書を作ってきてくれました。書類を書く際にも細部にこだわる「緻密派」いう才能タイプらしい経歴書です。びっしり書き込んであった職務経歴は、「ただ羅列しただけで、何が売りなのか分かりにくく、やる気を感じない」経歴書になってしまっていました。せっかくアピールポイントがあっても、これでは採用担当者の目に留まりません。
お話しして、高梨さんの強みは「ベンダとお客さま双方の立場を経験していること」「プロジェクトをひっぱる交渉力」「業務を円滑に進める対人能力」「スキル習得への意欲」「将来への意欲」であることが分かりました。添削前の経歴書では十分にアピールしきれていないので、追加した「成果/成長」の欄と「要約」、「自己PR」欄でこれらをしっかりアピールする経歴書になるよう、添削しました。
高梨さんのタイプ「緻密派」は、マイナビ転職「才能タイプ診断」で診断してもらいました。才能タイプを知ることで、自分の志向を客観的に知ることができるので、キャリアの方向性を見極めるヒントになります。あなたは「緻密派」? 「保守派」? それとも「楽観派」? |
より良い経歴書を作るポイント | ||
●コンパクトにまとめる
全4ページは長いので、3ページまで削減。新人時代の経験は評価対象になりづらいので短くし、担当業務や使用ツールが同じような案件もまとめた。
●強弱をつけた構成にする
アピールしたいポイントはしっかりと書き込む。特に、冒頭の「要約」は、人事担当者が最初に目を通し、「中身を読むかどうか」を決める、とても重要な部分。評価されたことを“実績”として書き、人事担当の目を引くような構成にした。「幅広い知識」といった曖昧な表現ではなく、「インフラ設計構築やプロジェクトリーダーをどれぐらいの期間、どの程度やったのか」という具体的な数値を用いた。
●「経験させてもらった」ではなく「勝ち取った」
細かい表現部分だが、「経験した」というと、受け身の印象を与えてしまうので、自分で「勝ち取った」「得た」という表現に変更した。
●自己PRは重点を絞る
高梨さんの強みは、「ベンダとお客さま双方の立場を経験していること」「業務を円滑に進める対人能力」「スキル習得への意欲」「将来への意欲」。特に、「交渉力」と「対人能力」は、これから高梨さんが目指すマネージャ・ポジションに最も求められる能力なので、ここを重点的にアピールした。
●経歴欄は具体的成果をPRするチャンス項目
重要なのは“実績”。それも具体的な数字を伴う“実績”だ。プロジェクト規模(人月)は大体の目安でもいいので書いておくと、「実力」が分かるポイントになる。具体的な成果を書けるように、詳細な経歴部分に「成果/成長」の記入欄を設けるとよい。職務経歴書では、どの項目でもPRするチャンスを逃さないように。
●何のために働くのか
「自分をさらに高められる場所に行きたい」というのは、重要なモチベーションだが、「社会貢献、会社貢献」という視点が抜けている。短くてもいいので、自分なりの言葉で意欲を伝えることが大切。
●髭彰さんプロフィール CAP総研代表取締役。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)にて、技術教育課長、QC推進事務局長、人材開発センター長を歴任。2001年にCAP総研を設立し、独自開発の行動変革プロセス・メソッドに基づく管理職研修の企画および講師、キャリア・カウンセリング、人材採用コンサルティングなど、幅広い分野で活躍している。 |
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提供:マイナビ転職
企画:アイティメディア営業企画
制作:@IT自分戦略研究所 編集部
掲載内容有効期限:2012年5月31日
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